埼玉新聞

 

【連載】外来昆虫・クビアカ被害の現場から― 記者が駆除作業に密着 独特な刺激臭や噛む危険性も ウメならでは駆除の難しさを体感

  • 捕獲したクビアカツヤカミキリ

    捕獲したクビアカツヤカミキリ

  • ノミで木の幹を削る様子

    ノミで木の幹を削る様子

  • クビアカの成虫の脱出孔

    クビアカの成虫の脱出孔

  • 木の下で見つかるフラス

    木の下で見つかるフラス

  • 木から出るヤニ

    木から出るヤニ

  • 捕獲したクビアカツヤカミキリ
  • ノミで木の幹を削る様子
  • クビアカの成虫の脱出孔
  • 木の下で見つかるフラス
  • 木から出るヤニ

 全国で猛威を振るう外来の昆虫「クビアカツヤカミキリ(クビアカ)」。埼玉県内でもウメやサクラなど、甚大な被害が及んでいる。記者が全国有数の「ウメの町」として知られる埼玉県越生町を訪れ、農家の駆除作業に密着した。
 
■惨状を知る

 クビアカの成虫が現れ始める7月上旬。越生町上野東のウメ農園「山口農園」に伺った。

 農園に入ったのは、午後2時ごろ。たくさんの木が生えている中、葉をほとんどつけていないウメの木が目につく。近づいて観察すると、幹のあちらこちらに穴が空いているのが分かった。農園の代表を務める山口由美さんによると、この穴は成虫が幹から出てくるための「脱出孔」だという。

 木の幹からは、大量のヤニが出ている。外敵からの攻撃を防ぐために、防衛反応として分泌するのだという。由美さんは「ヤニは木の涙。ウメが痛そうで、かわいそうでしかたがない」と声を震わせた。

 他の木を見ても、一見、茂って元気なように感じるが、葉がしわしわになっている。幼虫が木の幹の表層に近い部分を食べるので、木が水を吸い上げる能力を弱らせてしまい、枯らしてしまうのだ。改めて、クビアカの凶悪さを感じた。

■クビアカ発見

 農園に入って2分ほど、成虫を探すため農園を回ると、幹の焦げ茶色の中に鮮やかな赤色があるのに気づく。目を凝らすと、揺れる細長い触角と黒い胴体が動いているのが分かった。いた、クビアカだ―。

 あわててビニール袋を手に付けて、意を決して押さえ込む。手の中でモゾモゾと動くのが分かると同時に、「キューキュー」と木と木を擦り付けたような音が聞こえる。ちなみに、強力なあごで噛むこともあるので、手袋などをつけて捕まえるのがいいそうだ。

 無事捕まえたクビアカを見ると、背中のあたりから乳白色の体液が出ており、独特な青臭い刺激臭が鼻をつんざく。この臭いもクビアカが嫌われる理由だという。
 
■あちらこちらに

 クビアカは、環境省が指定する特定外来生物に指定されており、生きたままの運搬ができない。捕殺する場合は、薬品に漬けたり、頭部を潰したりする。かわいそうなことだが、環境を守るためには必要なこと。今回は木の枝で頭部を潰した。

 その後も農園を回る。ウメの木は低いところから枝分かれが多いため、農園を歩きまわるのも一苦労だ。高齢の農家も多いとのことで、改めて防除作業の大変さを感じた。

 それでも、虫取りもほとんどしたことがない記者が30分ほどで6匹も捕獲。交尾しているつがいの成虫も捕まえるなど、被害の拡大が進んでいることがうかがえた。
 
■ウメを守るために

 成虫を探した後は、幼虫の駆除にも密着した。幼虫が出すふんと木くずが混ざった物体「フラス」を目印に、幹に空いた穴を探す。穴の周囲をノミで削り、幼虫の通り道をたどって本体を見つけ出すのだ。

 穴の奥にいる場合は、針金を最深部まで当ててとどめを刺す。幼虫は2~3年ほど木の内部で成長することから、被害の根本を絶つためには確実に殺さなくてはならない。

 駆除作業にあたっていた、山口農園の山口博正さんは「今までは木の幹を傷つけることなんてしなかった。かわいそうだが、ウメを守るために必要な作業になってしまった」と嘆く。今では、越生の多くのウメ農家がノミを購入し、同様の作業をしているそうだ。一つ一つの作業の労力を考えると、駆除が追い付かない理由が分かったように感じた。

 今回行った駆除作業について、埼玉県環境科学国際センターの三輪誠研究員に確認したところ、「成虫は、踏んづけて殺すという手もある。大事なのは確実に息の根を止めなければいけないこと」と話した。また、幼虫の駆除について三輪さんは「一般的に『掘り出し』と言われる方法。食用のウメの場合は、農薬を幹に注入できないので、掘り出しが効果的」と有効な手段だという。

■取材を終えて

 越生町を訪ねて、凄惨な被害の実情を知った。埼玉県が誇る名物「越生のウメ」を楽しめなくなる日が来るかもしれないと思うと、胸が痛くなった。

 ただ、由美さんの一言が心に残った。「クビアカも生きているんだよね」―。ウメという生活の基盤を守るためとはいえ、日々、数多くのクビアカを捕殺する農家の心労は計り知れない。その命の活かせる方法はないのか、改めて考えるきっかけとなった。

 私の手には、今でもクビアカを潰した感触が残っている。

 

前編はこちらから。

=埼玉新聞WEB版=

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