2020年6月23日(火)

<新型コロナ>感染者と濃厚接触した人、無症状でも全員にPCR検査へ 周囲から保菌者に見られ拒絶…苦痛

PCR検査の予行演習で行われたドライブスルー方式による検体採取=4月25日、越谷市

 新型コロナウイルスの感染者と発症前後に至近距離または長期間接触したことがある濃厚接触者について、県や県内の保健所設置市は、無症状でも濃厚接触者全員にPCR検査を行う新たな方針を打ち出している。これまで濃厚接触者は2週間の自宅待機のみで検査は行われなかったため、「周りから保菌者のように見られ、精神的苦痛を受けている」という声が上がっていた。国が濃厚接触者の検査や定義を示す一方、医療現場や世間は感染リスクを厳しく捉える傾向にある。第2波が来た時、助けを求める隣人に手を差し伸べることはできるのだろうか。

■厳しい周囲の目

 さいたま市で葬祭業を営む40代の男性は、新型コロナの陽性判定を受けた70代の知人男性の濃厚接触者とされ、周囲からの拒絶に苦しんだ。男性は以前の顧客や地域住民が交流するコミュニティースペースを運営し、困り事の相談に乗ることも多い。緊急事態宣言が出ていた5月半ばにはせきなどの体調不良を訴える知人の独居高齢男性を別の社員と2人で付き添い、病院まで車で送迎した。

 送迎には全員がマスクをして車の窓を全開にし、消毒液も持参した。知人は陽性と判定され、保健所は男性と社員に2週間の自宅待機を求めた。男性は「気を付けて行動したので濃厚接触の可能性は1%もないはず」と主張したが、保健所の判断は覆らなかった。「冤罪(えんざい)をかけられたような気持ち。話すのも疲れた」と振り返る。

 さらに、会社に経緯を伝えると出勤自粛を求められた。子どものいる従業員からは男性と共に働くことに懸念が寄せられたという。男性は「良かれと思って知人を助けたが、社員は社長が危ない橋を渡ることをよく思わなかった。見捨てた方がよかったのか」と話した。

 不安に感じるのは今後のことだ。「感染の第2波が来た時、同様に周囲の人を助けられるだろうか」。自らに問い掛けた男性は「濃厚接触者の社会復帰を支援する意味でのPCR検査の実施や、『(感染者を助ける際に)ここまでは大丈夫』という基準を行政に示してほしい」と訴えた。

■リスク厳しく捉える

 5月末に厚生労働省は全国の都道府県、保健所設置市などに通知し、濃厚接触者全員に検査を行うよう対応の変更を求めた。同省は「感染者が減少しており、数日内に濃厚接触者全員への検査は可能。今後感染者数が増えても対応できるように検査体制の拡充も求めた」と説明する。

 国立感染症研究所は濃厚接触者の定義について、陽性者の発症や検体採取2日前以降に感染予防具なしで1メートル以内の距離に15分以上接触した人などを挙げている。マスクも予防具に当たると考えられるが、同省の担当者は「マスク着用は考慮すべきだが、(濃厚接触に当たるかどうかは)総合的に判断される」とする。

 ただ、医療現場は感染リスクをより厳しく捉えざるを得ない。さいたま市保健所は濃厚接触について「マスクの種類や密着の度合いなどを調べた上、最終的には保健所長が決める」とする。同保健所でも現在は無症状の濃厚接触者までPCR検査を行っているが、偽陰性の可能性もあることから「検査で陰性でも、感染者との接触から2週間の自宅待機は変わらない」と理解を求めている。

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