埼玉新聞

 

婦人服メーカー、医療用防護服を製造 生地裁断で使うビニールシート活用、疲れないよう独自技術で設計

  • 自動裁断機(手前)を囲むニイニのスタッフたち。右端に保坂峻社長=蕨市塚越

  • 自らデザインした医療用防護服を着る保坂郁美さん=蕨市(ニイニ社提供)

 蕨市塚越の婦人服ファッションメーカー「ニイニ」(保坂峻社長)が、洋服生地を裁断する時に使うビニールシートを活用した医療用防護服を製造し発売した。「医療現場の人たちが防護服がなくて困っていると知って、何とか役に立ちたいと考えた」とデザインを担当した同社のデザイナー保坂郁美さんは言う。つっぱったり疲れたりしないように「ゆとり設計」で独自の技術を生かした。

 コンピューターと連結して、設計したパターンで洋服生地を自動裁断できる大型裁断機を活用。生地の裁断に使うビニールシートを防護服の生地に転用し、ミシンで縫い上げた。

 同社では、洋服用の生地を裁断する際、裁断機のテーブル(幅2メートル、長さ3・5メートル)の上に紙、洋服生地、ビニールシートの順に広げ、テーブルの下から空気を吸引する。ビニールシートが空気を通さないために生地や紙が台の上に接着して安定し、パターン通りに裁断できる仕組み。

 このビニールシートは生地の裁断が終わると廃棄物として捨てる。このビニールを原料に使い、防護服を仕立てた。1着分は5パーツで仕立てる。同社は人の動きに合わせたゆとりを持たせる仕立てで独自の技術を持つ。これを防護服に生かした。

 ベテランパタンナーの畑岸真知栄さんは「普通の防護服製品より20センチほど身の丈を長くし、背中もゆったりカバーするように型紙を作った。着心地はいいはずです」。縫製のベテラン、山下恵美子さんは「布と違うのでやりにくかった。ビニールを縫ったのは初めてです」と話した。

 12日、東京都内の葬儀会社へ初めての製品発送の日、仕上がった製品には一つずつに1枚、社員がメッセージカードを付けた。縫製担当の猪股洋美さんは「心を込めて作りました」。同じく縫製担当の有賀朋美さんは「最前線で働かれている方に感謝申し上げます。動きやすいようにスタッフ一同、考えて作りました」と書いた。

 同社は蕨市特産の縞木綿「双子織」のマスクを発売したのに続き、コロナ関連の商品開発の第2弾となる。1着880円(100着単位の場合は770円)。

 問い合わせは、ニイニ(電話048・441・6581)へ。

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