埼玉新聞

 

迷惑あおり運転、100人が病院で大騒ぎ…暴走する一部外国人、相次ぐ苦情 問題の背景は 騒動を取材<下>

  • 川口市議会に提出された「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」

    川口市議会に提出された「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」

  • 川口市議会に提出された「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」

 多文化共生を掲げる埼玉県川口市で、トルコ国籍のクルド人同士の殺人未遂事件があり、約100人が絡む騒動へと発展した。交流サイト(SNS)などではクルド人排斥を訴える声が上がり、市民からは不安の声も。事件は7月4日夜、同市内の路上で発生した。クルド人の男らによるトラブルを起因とし、複数人が重軽傷を負う殺人未遂事件に。その後、男らが運ばれた近くの病院「川口市立医療センター」周辺に約100人が駆け付ける騒ぎとなり、機動隊員らが出動した。これまでに5人が県警に逮捕されている。

■クルド人騒動(下)迷惑行為防止へ意見書

 直前の6月末、川口市議会は迷惑行為から市民を守るためとして、「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」を賛成多数で可決した。ただ、入管施設への収容を一時的に免れ、公的支援を受けにくい「仮放免」のクルド人に日本のルールを周知させるのは難しい事情もある。

 意見書は「多くの外国人は善良に暮らしている」と前置きしつつ、一部外国人が「資材置き場周辺や住宅密集地域などで暴走行為、あおり運転を繰り返し、人身、物損事故を多く発生」させているとし、そうした行為が「善良な外国人に対しても差別と偏見を助長している」と指摘。地方自治法に基づき、警察官増員による一部外国人の犯罪の取り締まりや資材置き場周辺のパトロール、暴走行為等の交通違反の取り締まりの強化の3点を国や県などに要望している。特定の国や民族は名指ししていない。

 意見書案を取りまとめた自民党市議団幹事長の若谷正巳市議らによると、日本で生まれ育って日本語を話し、日本人と同じ学校に通っている外国人の子どもたちがトラブルを起こすことはなく地域に溶け込んでいるという。若谷市議は「意見書は外国人排除を目的としたものではない」と強調する。

 しかし、一部外国人によるトラブルなどは目立ち、4月に行われた市議選でも有権者から「川口の治安が良くない」といった相談が各候補に寄せられた。そのため日本語や日本の文化、暮らし方を知らない外国人に対し、粘り強く周知していく必要性があると判断。「われわれの意思表示」(若谷市議)として意見書を提案したという。

 多文化共生などを担当する川口市協働推進課によると、同課にもこれまでに市民から「夜中に外国人が公園で騒いでいる」「車を飛ばして運転していて危ない」などの情報提供があり、一連の騒動後には「市で何とか対応してほしい」などの苦情が複数寄せられた。

 同課は日本で生活するためのルールなどを知らないことが背景にあると考え、ごみの出し方など必要な知識を多言語で伝える外国人生活ガイドを作成したり、日本語教室を開くボランティアを紹介しているが、そうした行政の支援を受けにくい外国人もいる。

 市内で暮らすトルコ国籍の外国人の中には仮放免のため、住民登録されていない人も多い。彼らにルールをどう周知していくかは、多文化共生社会の実現に向けた難題だ。

 支援団体「在日クルド人と共に」の温井立央代表は「人口減少社会の中で、国が外国人の受け入れについて明確なビジョンを示さない限り、地方行政も動きづらい現状もある」とし、一連の騒動によって溝を深めるのではなく、「クルドの方々と地域住民がお互いに知恵を出し合い、根本的な問題解決の糸口を探す良い機会」と前向きに捉えるよう求めている。

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