埼玉新聞

 

大混雑の駅周辺、長年危ないまま…ついに大学が整備費に協力、“新改札”今月着工へ 車と学生は毎年接触

  • 新たな改札口が設置される予定の東武越生線川角駅下りホーム南側=7月19日、毛呂山町下川原

    新たな改札口が設置される予定の東武越生線川角駅下りホーム南側=7月19日、毛呂山町下川原

  • 新たな改札口が設置される予定の東武越生線川角駅下りホーム南側=7月19日、毛呂山町下川原

 駅周辺の交通混雑による危険が長年課題だった毛呂山町下川原の東武越生線川角駅に、新たな改札口が設置されることが、1日までに東武鉄道などへの取材で分かった。改札口は下りホームに直結する南側に開設。東武鉄道は8月中にも着工し、2023年度内の利用開始を目指す。乗降に伴う動線が変わり、安全性が高まることが期待される。

 東武鉄道によると、川角駅は22年度の1日平均で、1万2685人が乗降。越生線の駅では最も利用客が多い。ホームは上下2本あり、両ホームは渡線橋で連結。現在は北側の上りホーム坂戸駅寄り末端から出入りできる改札口1カ所があるだけだ。

 駅周辺には複数の大学や高校があるため、利用客の大部分は学生や生徒、教職員らが占める。このうち、城西大学、城西短期大学、明海大学(以上、坂戸市)、日本医療科学大学(毛呂山町)は駅の南側に立地。町によると、4校の関係者約8500人が越生線で通学、通勤している。

 朝の通学、通勤時間帯には、大学関係者の大半は下り線で下車。上りホームを経由して、改札口を出る。しかし、駅前にはロータリーがなく、道路の幅は狭くて歩道もない。さらに、踏切を渡って各校へ向かうため、改札口外の道路からホームまで滞留する。駅前は車両の通行も多く、徒歩の学生らとの接触事故がほぼ毎年起きていたという。

 住民による改善の陳情は1970年代からあったが、検討が本格化したのは2016年ごろ。駅舎の橋上化や改札口の南側への移設も議論されたものの、実現しなかった。町は21年、住民と各校関係者、識者らでつくる川角駅周辺地区整備協議会を設置。昨年10月には解決の道筋を提案した報告書が井上健次町長に提出され、町と東武鉄道、最も多い約7500人の学生を抱える城西大学を中心に、協議や交渉を進めていた。

 東武鉄道は社の事業として、駅北側の改札口を維持した上で、南側にも常設の改札口を開く。同社は設置を決めた理由について、「駅利用者の利便性向上や、地域住民の安全に寄与できると判断した」と説明。整備費は城西大学の協力を得るとしている。

 早期解決を強く要望してきた城西大学は「東武鉄道に決断していただき、うれしく思っている。これで学生の安全確保につながるはず」と歓迎。両者は6月に資金提供などの協定を結んだという。

 南側の改札口と接続し、ホームに平行して延びる現在の町道は、幅が約4メートルしかない。車両の通行が多い道路を通らず各校へ向かえるが、駅前広場とアクセス道路の整備は急務だ。町は注意喚起の路面表示などで当面の安全対策を講じるとともに、23年度の一般会計当初予算に計上した約640万円で概略設計を始める方針。まちづくり整備課は「改札口の開設に伴う基盤整備を通じて、駅周辺の発展を図りたい」としている。

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