埼玉新聞

 

いいかげん“ごみ435トン”幹線道路の工事で発見も…埋めた会社と市職員ら裁判へ 「背骨」となる道で何が

  • 幹線道路整備の工事現場(2021年11月)

    幹線道路整備の工事現場(2021年11月)

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 富士見市発注の道路工事現場で見つかった産業廃棄物を埋め戻し不法投棄したとして、同市職員や建設会社の社員らが書類送検された事件で、さいたま地検川越支部は、廃棄物処理法違反の罪で、工事を請け負った富士見市の建設会社と同社の会社員男(52)、同市職員の男(51)をさいたま地裁川越支部に起訴した。

 起訴状などによると、男らは2020年9月7~11日までの間、共謀し、富士見市水子の幹線道路工事現場で、木くずや廃プラスチックなど計約435トンを捨てたとされる。

 一方、共犯者として男らと共に書類送検されていた、同社の作業員男性2人について、同地検川越支部は同日付で不起訴処分とした。処分理由は明らかにしていない。

■「工事現場にごみを埋めている」と目撃者が通報していた 以下は書類送検時の記事(2021年11月19日掲載)

 富士見市発注の道路工事現場で見つかった約435トンの産業廃棄物を埋め戻し、不法投棄したとして、県警生活経済課と東入間署は、廃棄物処理法違反(投棄禁止)の疑いで、工事を請け負った富士見市の建設会社と工事の監督員だった市職員の男(50)ら4人をさいたま地検川越支部に書類送検した。

 他に書類送検されたのは、いずれも同社の現場責任者の男(51)と作業員の男2人。

 書類送検容疑は、共謀の上、2020年9月7日~同11日ごろ、富士見市水子の幹線道路工事現場で、木くずやコンクリート片などの産業廃棄物(計約435トン)を投棄した疑い。土を含めると、約2300立方メートルにも上るという。

 生活経済課によると、2020年10月7日、「工事現場にごみを埋めている」と、目撃者の男性からの110番があり、12月11日に現場検証を実施。任意で事情聴取するなどして捜査を進めていた。市職員は現場を監督する立場で、投棄現場にも立ち会っていたという。市職員と建設会社の現場責任者が指示を出し、作業員2人が重機を使って産廃を埋めていたとみられている。

 市によると、現場は国道463号(浦和所沢バイパス)と柳瀬川に架かる富士見橋とを結ぶ長さ約340メートル、幅18メートルの「富士見橋通線」。市職員と現場責任者らは、幹線道路整備の第1工区着工前の地質調査で廃プラスチック片など産廃入りの土を確認しながら、再利用する際に分別などの適切な処理を行わずに埋め戻し、第2工区の工事を始めたとみられている。現在、工事は中断している。産廃は数十年前から現場にあったとみられ、どのような経緯で投棄されたかは分かっていない。

 県警は共犯事件で捜査に支障があるとして、4人の認否を明らかにしていない。

■細かいごみ、除去できず

 現場は東武東上線柳瀬川駅から北に約300メートルの田園地帯。産廃入りの土がむき出しになっていた土地はシートに覆われ、重機は置かれたまま。工事が再開する雰囲気はない。近くに住む70代男性は「再開したと思ったら、すぐ止まる。行政のやることはいいかげん」と語り、農作業中の80代女性は「道路ができると言われてから何年もたっている。ごみを処理しなかったから、こうなったのではないか」と表情を曇らせる。

 市はこれまでの埼玉新聞の取材に、産廃を処理し改良した土を第2工区に再利用する予定だったが、土と廃材を分別する専用機械を置くなどのスペースが狭く、パワーショベルを導入したり、手作業でごみを除去しようと試みたものの、細かなものまでは取り除けなかったとみている。

 昨年10月に地権者を含む関係者から「ごみが混じっている」との連絡を受けて市は工事を中断。今年7、8月には第2工区の敷きならされた土地を元に戻し、土を寄せる作業を実施した。8月に有害物質が確認されたため、周りの農地などに流出しないようにシートをかぶせてある。

 市は、細かい産廃だけを取り除くのが困難なことから、混入している土ごと処分した上で新しい土を搬入して工事を進めていく意向という。担当課は工事再開時期は未定としながらも、「できるだけ早く、取り掛かりたい」と話す。

 工事を請け負った市内の建設会社は「責任者がいないので分からない」としている。

 職員の書類送検を受け、富士見市の星野光弘市長は「市民に迷惑を掛けて大変申し訳ない。事実関係を確認して適切に対処する」とコメントを出した。

■富士見市長が陳謝(2021年11月27日掲載)

 同市の星野光弘市長は定例記者会見で、「事件は大変遺憾で、市民にご迷惑と心配を掛けて申し訳ない」と改めて謝罪した。

 第1工区着工前の地質調査で廃プラスチック片などの産廃が確認されたが、適切に分別処理されずに埋め戻しなどに再利用されたとみられ、第2工区の工事は現在中断している。

 会見で星野市長は「現場の道路は市の背骨に当たる重要な道路で、事前の調査をしっかりやり慎重に工事をしてきたと認識しているが、地検の捜査には正直に適切に対応したい」と述べた。工事を担当する市道路治水課は「工事内容や今後の見通しについては捜査中のため、差し控える」としている。
 

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