なぜ過失…酒気帯びで時速120キロ走行、赤信号を無視し横断歩道の男性と衝突した死亡ひき逃げ事件 母ら再捜査求め署名、地検が危険運転に訴因変更 ルール守った息子を失った母「正しい方向に向かった」
狭山市で昨年12月、時速約120キロで走行して赤信号を無視した車に男性がひき逃げされ死亡した事件で、自動車運転処罰法違反(過失運転致死)でさいたま地検川越支部が起訴していた塗装工の男(20)=狭山市=について、同支部は24日、危険運転致死罪に切り替える訴因変更をさいたま地裁川越支部に請求した。過失運転致死罪を予備的訴因としている。
起訴状などによると、男は昨年12月22日、普通車を運転し、狭山市鵜ノ木の国道交差点で、赤信号を示していたのにもかかわらず、信号をことさらに無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約120キロで進行。信号に従って横断歩道を渡っていた男性=当時(25)=を発見し、急制動の措置を講じたが衝突し、多発外傷を負わせて死亡させたとされる。その後必要な救護措置を取らずに逃走し、酒気を帯びて運転していたとして道路交通法違反(ひき逃げ)と同法違反(酒気帯び)の罪に問われている。
県警は昨年12月22日に道交法違反(酒気帯び)と、1月8日に危険運転致死などの容疑で再逮捕していた。さいたま地検川越支部は1月28日、過失運転致死罪でさいたま地裁川越支部に起訴し、4月に同支部で初公判が予定されていたが、期日が取り消されていた。
さいたま地検によると、同支部に起訴後も補充捜査を継続。奥田洋平次席検事は「収集した証拠を加えて再検討した結果、危険運転致死の類型である『赤信号ことさら無視』の立証が可能と判断した」と説明。訴因変更請求が認められた場合は裁判員裁判となり、さいたま地裁で審理される。
■母「ほっとしている」 息子の命、無駄にしたくない
「ひとまずほっとしている。これで正しい方向に向かったと息子に伝えたい」。母(55)は訴因変更請求が行われたことを受け、落ち着いた声で語った。
都内の大学を卒業後、保育士として働いていた男性。失声症を患って退職したあとも前向きにリハビリを続け、再就職先を見つけるまでに成長した。弁当や惣菜を作る仕事で、週3回の勤務から徐々に回数を増やし、昨年12月から週5回勤務を始めていた。事故の前日である同月21日は休日で、都内で大学時代の友人と忘年会を楽しんでいた。
狭山市の自宅へ戻る途中、国道16号を渡っていたところで事故に遭い、搬送先の病院で亡くなった。押しボタン式の横断歩道で、警察には青になってから渡っていたと説明を受けた。「保育士の頃から誰か小さい子が見ているかもと思い、絶対に横断歩道が青になってから渡る子だった。なぜルールを守った息子が死ななければならないのか」と行き場のない気持ちがあった。
その後、運転手が危険運転致死容疑などで逮捕されたが、さいたま地検は量刑の軽い過失運転致死容疑などでさいたま地裁川越支部に起訴。「なぜこれが過失になるのか」。疑問に思った森口さん家族はすぐに再捜査を求める署名活動を開始。関東交通犯罪遺族の会(あいの会)の助けもあり、署名は約1カ月で直筆が9千筆、オンラインで約3万8千筆の計4万7千筆の署名が集まった。3月25日、母らはさいたま地検川越支部を訪れ、署名を提出した。
訴因変更請求について「署名活動など周りが協力してくれたおかげ。署名を集めたことには意味があった」と振り返る。危険運転致死罪が裁判で認められることを望むのはもちろん、「同じような事故で泣き寝入りする人もいると思う。息子の命を少しでも無駄にしないためにも、声を上げなくてもよい社会になってほしい」と願っている。











