埼玉新聞

 

直木賞候補、草加市の須賀しのぶさんが初エッセー刊行 「好き」を否定しないで 少女期のオタク魂 少女小説への思い…語る

  • 「日常の楽しみや趣味を読者と共有できたらいいなと思った」と話す須賀しのぶさん

    「日常の楽しみや趣味を読者と共有できたらいいなと思った」と話す須賀しのぶさん

  • 「日常の楽しみや趣味を読者と共有できたらいいなと思った」と話す須賀しのぶさん

 直木賞候補となった「また、桜の国で」をはじめ、近現代史を題材にした小説で知られる作家の須賀しのぶさん(53)=草加市=が初エッセー本「須賀のスガスガしくない話」(集英社)を刊行した。推し活や高校野球など「好きなこと」を軽妙につづりながら、歴史や芸術を交えて独自の視点で掘り下げる。「自分の好きを何より優先してほしい」との思いが込められた、笑いと知的好奇心にあふれる一冊だ。

 須賀さんは1994年、「惑星童話」でコバルト・ノベル大賞読者大賞を受賞しデビュー。集英社の少女向けレーベル「コバルト文庫」で「流血女神伝」などのヒット作を執筆し、その後は文芸作品へと活動の場を広げた。エッセーは、コバルト文庫時代の担当編集者から執筆を依頼され、「コバルトのあとがきの雰囲気で」と背中を押されたことがきっかけ。

 「自由におしゃべりした感覚で本当に楽しかった」と話す通り、「人はなぜ、締め切りが近づくと大掃除を始めてしまうのだろう」「なんだこの黒歴史量産機」と、全編にわたってフランクな語り口で進んでいく。歴史への深い造詣がのぞくのも“らしさ”。例えば、老眼の話はゲーテへ、スギ花粉の話はわずか10歳で即位したポーランド女性国王へと発展する。

 少女期にオタク魂が爆発するエピソードも必読だ。小学校高学年の頃に吉川英治の歴史小説「三国志」に出合い、諸葛孔明と妻の黄夫人に「カプ萌(も)え」(2人の関係性に魅了されること)したという。2人が登場する場面を求め、さまざまな「三国志」を読むも満足できず、ならば自分で書こうと人生で初めて小説を執筆。まさに創作の原点だ。「本当にオタクですよね。物語自体も面白かったけど、夫妻が出てくることで一つ深いものにはまった。これが歴史との出合いだったかも」と振り返る。

 中高生の頃は、少女小説に夢中だったが、大学生になると「世間体を考えて」“卒業”した。ところが、19歳の時、コバルト文庫の人気作家・氷室冴子さん(2008年死去)の古代ファンタジー小説「銀の海 金の大地」を読み、感動。その時の思いをエッセーにこうつづっている。「なんで私は、自分から枠にはまろうとしてるんだろう。馬鹿馬鹿しいし、なんてつまらない!」。選考委員だった氷室さんに読んでほしくて文学賞に応募し、受賞。大学4年生から少女小説を書き始めた。

 今年、コバルト文庫は創刊50周年を迎えた。昨年には「銀の海~」が復刊されるなど、かつて夢中になった作品に再び光があたる。須賀さんはエッセーにこう記す。「そういう時代になったんだなと嬉(うれ)しく思います。自分の中の『好き』を否定しなくていいんだ」

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