埼玉新聞

 

シュークリームづくりの奥深さ語る 埼玉・八潮の洋菓子メーカー、専門店シェフとコラボ 新商品を全国のコンビニやスーパーで販売 発売を記念、トークイベント開催 開発の舞台裏…それぞれのこだわりとは

  • 新商品を監修した和泉光一シェフ(中)と、開発を担当したモンテールの上総壮介さん(左)、本庄有樹乃さん

    新商品を監修した和泉光一シェフ(中)と、開発を担当したモンテールの上総壮介さん(左)、本庄有樹乃さん

  • シューアラクレーム・ショコラ&カスタード

    「シューアラクレーム・ショコラ&カスタード」(税込み237円)。ベルギーチョコを使用したショコラクリームと、アーモンドプラリネ、タヒチ産バニラをブレンドしたコク深いカスタードを味わうシュークリーム

  • エクレール・キャラメルサレ

    「エクレール・キャラメルサレ」(税込み237円)。生キャラメルペーストと、カスタードクリームを2層にしたエクレア

  • 【地図】八潮市(背景薄緑)

    モンテール本社のある八潮市の位置

  • 新商品を監修した和泉光一シェフ(中)と、開発を担当したモンテールの上総壮介さん(左)、本庄有樹乃さん
  • シューアラクレーム・ショコラ&カスタード
  • エクレール・キャラメルサレ
  • 【地図】八潮市(背景薄緑)

 八潮市の洋菓子メーカー「モンテール」は、東京・代々木上原のパティスリー「アステリスク」の和泉光一シェフが監修した新商品を企画、6月から全国のコンビニエンスストアやスーパーマーケットで販売を開始した。

 発売を記念し、都内でトークイベントが開かれた。コラボレーションの裏には、専門店シェフと洋菓子メーカーそれぞれのこだわりがあった。双方が開発の舞台裏を明かした。

 和泉シェフは東京調布市の「サロン・ド・テ・スリジェ」のシェフ・パティシエを長年勤めた。「ワールド チョコレート マスターズ 2005」で総合3位。その後も、世界的コンクールで数々の受賞歴を誇る。

 和泉シェフが今回モンテールとコラボした商品は「シューアラクレーム・ショコラ&カスタード」と「エクレール・キャラメルサレ」。いずれも税込み237円。7月31日まで販売している。

 トークイベントでは、和泉さんと、モンテールの開発担当上総壮介さん、本庄有樹乃さんの3人がシュークリームの開発秘話を披露した。

■クリーム開発、チョコとカスタードのバランスで悩み…

 開発段階でまず苦労したのがクリーム。上総さんは当初の気持ちを率直に語った。「シェフの見本を食べさせていただいた時には本当に感動した。再現する時にチョコとカスタードをどう組み合わせていくか悩んだ」

 新商品はカスタードとチョコレート、2つのクリームを主役に立て、バニラとプラリネ(ナッツベースの製菓素材)を加え味わいを引き立てた。より互いの美味しさを引き出すよう配合した。

 和泉さんはクリームのコンセプトに触れた。「人は口に入れた時、最大2つくらいの味しか感じられない。メインになる玉子のカスタード、チョコレートを融合させるにあたって、厚みを出していかなければならない」
 
 和泉さんの期待にどう応えるか。モンテール社内では、香りの立て方、クリームの製造の仕方など検討が続いた。商品のための製造ラインを新たに設け、工夫を凝らした。

 とりわけメーカーは専門店とは異なり、流通や賞味期限がある。クリームの開発に取り組んだ本庄さんは産みの苦しみを振り返った。「チョコクリームの中にも生クリームを使用し、贅沢(ぜいたく)でリッチな配合にしている。ところが賞味期限が5日間あり、時間が経つとクリームが固くなってしまう、ごわついてしまうという課題があった」

 和泉さんに相談し、配合や製法についてアドバイスを受け、改良を重ねた。次に問題となったのが、チョコレートとカスタードのバランス。社内では意見が分かれた。社員からはチョコレートを増やした方が良い、との見方があった。

 上総さんは「ごほうび感を出すために、ビター感を出してもよいと思った。一方でバランスはシェフならではのこだわりがあった」

 和泉さんとモンテールがたどり着いた答えは、「カスタードを増やすことでチョコレートの苦みが引き立つ」だった。

 和泉さんには、別の洋菓子を作った時の成功例があった。酸味が足りない時にレモンを足すのではなく、砂糖を増やすことでよりレモンの酸味を引き出した。

 和泉さんは長年の経験を商品開発に生かしながらも、新しい味を作るためには、挑戦を繰り返すことが大切と強調する。「ただ入れていくだけではなくて、時には引くことも大事なんだ。香りや味が何にのってくるかは、やってみないと分からない」

■生地のしぼり目!「無理の先の努力に新しいものが生まれる」

 生地づくりにもこだわった。和泉シェフは当初、生地を再現することは難しいと考えていた。

 「うちのレシピは再現が不可能。しぼり目が入っているシュークリームなんて、スーパーで見たことがない」

 モンテールは今回、表面にしぼりの形状を出すことにこだわった。しかし形状を出すために、生地を固くすると食感がごわつく。社内でも、日が経過するうちに、食感が気になるとの指摘が相次いだ。

 上総さんと本庄さんは和泉シェフに食らいつき、新しい生地の製造に成功した。

 上総さんは「生地のごわつきや日が経つにつれ美味しく感じづらくなってしまう所をシェフに相談した時、塩と黒糖を原料に使うことを教えていただいた」。本庄さんも「実際に試作してみると、黒糖がクリームの一体感を感じられつつ口の中の感じもバランスが良かった」と話した。

 和泉シェフは「2人には信念があった。無理の先の努力に新しいものが生まれる。シューパフはただクリームを包む皮であってはいけない。それだけ食べても美味しいものでなくてはいけない。2人はそれを時間をかけて作ってくれた。うれしい限り」と若手の成長に笑みを浮かべた。

 和泉シェフとモンテールの執念が詰まった逸品。和泉シェフは自信作を手に「蘊蓄(うんちく)はあと。お客さんがおいしいと、ニコッと笑ってもらえれば」と話した。

 さてトークショーが終わり、無駄な心配をしてみた。全国にシェフ直伝のシュークリームが流通することで、「アステリスク」のお客さんが減るのでは?。和泉シェフにたずねると、こんな答えが返ってきた。

 「モンテールさんのシュークリームは、子どもからお年寄りまで、老若男女たくさんの人が食べる。食べやすく高級感を攻め込む、すごく難しい仕事です。一方で専門店は店ならではのこだわりを表現できる。チョコレートを強くしたり、もっととんがったものを出せるんです。ぜひいらしてください」

=埼玉新聞WEB版=

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