埼玉の桜がピンチ 特定外来生物のクビアカツヤカミキリによる食害が深刻 県内全域に拡大も 樹勢が衰えたり、枯れてしまう木が増 自治体などは対策に苦慮
熊谷地方気象台が23日に熊谷で桜(ソメイヨシノ)が開花したと発表し、桜前線が埼玉まで到達した。県内各地の名所は、これから大勢の花見客でにぎわう。だが、春を象徴する花が近年、危機にひんしている。特定外来生物のクビアカツヤカミキリによる食害だ。樹勢が衰えたり、枯れてしまう木が増え、自治体などは対策に苦慮している。
開花宣言が出た同日、標本木がある熊谷市の熊谷桜堤を訪れた市内の70代女性は、心配そうに桜を見上げた。「満開の頃には、土手がピンクの帯みたいになってきれいなんですよ。でも、数年前はもっとすごかった」と言う。500本近いソメイヨシノが長さ約2キロの並木をつくり、「さくら名所100選」にもなっている熊谷桜堤。熊谷市公園緑地課は、古木のほぼ全てにクビアカツヤカミキリが入ってしまったとみている。
■わずか15年で繁殖
クビアカツヤカミキリは、中国やモンゴル、朝鮮半島、ベトナムなどに分布。成虫は桜、桃、梅といったバラ科の樹木に産卵し、幼虫は樹内で2~3年過ごして成虫となる。国内では、2012年に愛知県で初めて被害が確認された。海外から持ち込まれた輸送用の木製パレット内などで生きていた幼虫が、繁殖したと考えられている。
県環境科学国際センター(加須市)によると、県内ではこれより早い11年に深谷市で雄の成虫1匹が捕獲されたものの、被害は確認されなかったという。その後、13年に草加市と八潮市の桜で食害を初めて発見。17年になって、熊谷市や行田市といった県北部を含む県内6市で新たに侵入が明らかとなった。
幼虫は、樹皮の下にある辺材部を食べる。この部分には水や養分を運ぶ管が通っており、損傷を受けると枯死につながりかねない。また、老木は樹皮に割れ目が多く、卵を産みつけやすいという。
同センターは18年度から、県民に参加を呼びかけて「クビアカツヤカミキリ発見大調査」を開始。24年度までに被害が確認されたのは、44市町村に上った。三輪誠研究推進室副室長は、「25年度は集計中だが確実に広がっており、県内全市町村に達するかもしれない」と警戒する。
■幹のフラス探して
各自治体では、対策に取り組む。行田市は管理する桜約2200本のうち、7割ほどで被害を確認した。約90%が食害に遭った武蔵水路沿いでは、枯れた木を伐採。クラウドファンディング型ふるさと納税などで寄付を募り、14日には苗33本を植えた。
北本市では昨年、市内にある国指定天然記念物の石戸蒲ザクラで初めて、食害が見つかった。市は薬剤で駆除し、今のところ樹勢が衰えるなどの影響はないという。市文化財保護課は今年も成虫が活動期を迎える初夏以降、職員による見回りを再開し、保護に全力を挙げる方針だ。
熊谷市は23年度から、毎年300万~500万円ほどの予算を充てて、市管理の桜約千本に薬剤を使用。熊谷桜堤では、年2回の注入を行っている。また、22年度からは毎年、桜堤で十数本の木を伐採。新たな苗木を植えている。25年度は約700万円をかけ、12本を切ってソメイヨシノの苗14本を植樹した。
桜堤のソメイヨシノは多くが樹齢50年以上で、60~80年とされる寿命が迫った木も少なくない。市公園緑地課の担当者は「完全に駆除できないのに苗木を植えれば、餌を与えるようなもの。名所なので、一挙に植え替えるのも難しい」と頭を悩ませる。
クビアカツヤカミキリは繁殖力が強い上、国内に天敵がなく、ソメイヨシノなどの桜並木も多いため急拡大した。被害は埼玉県や群馬県、栃木県で深刻だ。三輪副室長は「早期発見が重要。花見に行ったら幹に(木くずとふんが交ざった)フラスがないか注意し、異常があれば知らせてほしい」と協力を求めた。









