許せない…眠れない父が突然死 「来るな」心配した娘を一喝していた父、揺れる自宅は悪臭…道路陥没で生活一変、あすで1年 父の死因、警察は“不詳の病死”とするも娘「事故がなければ、父は死ななかったのでは」
「眠れない、眠れない、と繰り返す父の声が忘れられない」―。関東圏に住む40代女性は八潮市の道路陥没事故から1年を前に、県が今月16日に市内で実施した公認心理師による相談会に参加した。事故現場から約60メートルの自宅で、1人暮らしをしていた父親=当時(81)=は昨年6月、突然死亡した。事故との因果関係がないことは分かっているが、「事故がなければ…」と女性は思ってしまう。長期にわたった悪臭や揺れ、釣り合わぬ補償。住民たちは行き場のない憤りを抱えている。
■「来るな」と一喝
女性は昨年1月28日の事故直後から、父親と電話で連絡を取り合っていた。明るく元気で隣近所から親しまれていた父親。受話器の向こうで、悪臭や家の揺れについて繰り返し悩んでいる様子だったという。女性が心配して直接会いに行くと言うと、「来るな」と一喝された。「私に持病があり、(父親は)現場に近づかないよう気を使った」と女性は振り返る。
警察が死因を調べたが、最終的には「不詳の病死」として処理されたという。父親の死を受け、女性自身も昨夏から精神的に不安定な日々が続く。息苦しさにさいなまれ、腹部に痛みを抱える。
女性は今回の相談会で父親の死について、詳しい話を初めて口外した。事故と父親の死に直接的な因果関係がないことは分かっている。それでも「1年が経過して、やっと父のことを話すことができた。事故がなければ、父が死ぬことはなかったのではないか。相談を聞いてくれた先生、県の職員もみんな親切でとても優しかった。でも許せない」と思いを語る。
■見えないものとの闘い
未曽有のインフラ事故から、現場近くの住民は複雑な思いを胸に1年を過ごしてきた。事故から約3カ月、陥没箇所に落下したトラック運転手の救出活動が続いた。近隣住民は、悪臭のほか、工事による揺れや騒音にさいなまれながら我慢してきた。
運転手が昨年5月に救出され、死亡が確認された。その後、県は昨夏に補償の提案を公表。ようやく住民の被害に焦点が当たり始めたものの、被害の実態は見えない。
現場近くの住民は昨年12月、事故発生1年に向け、被害者の会「虹の架け橋」を発足させた。呼びかけ人の一人、木下史江さんは1年を振り返り「下水道、地盤、硫化水素、精神的被害…。見えないものとの闘いだった」と声を絞り出した。
■経験を記録に残す
昨夏以降、住民アンケートやヒアリングを進め、被害の実態を行政に報告してきた。金属の腐食、急に調子が悪くなりエアコンを交換した、ストレスや不安による体調不良が続くなどの声が上がった。「証明できず、訴えても受け入れてもらえない」と木下さん。住民は被害や苦しみと県が示す補償が釣り合わず、行き場のない憤りを抱える。
「虹の架け橋」は今後、より詳細な実態調査を進めるとしている。目的は補償の対象を広げるためだけではない。木下さんは「この悔しさや不安。自分たちの経験を記録に残したい。記録を伝えて役立てることで、報われる何かがあるのではないか」と話している。
■日常回復に全力で/大山忍八潮市長のコメント
改めて被害に遭われた方へ心から哀悼の意を表しご冥福をお祈り申し上げるとともに、被害に遭われた方の家族、会社の皆さまにお悔やみ申し上げます。
現在、県がインフラ整備をはじめ復旧・復興を全力で進め、事故現場である県道松戸草加線の通行止めとなっている箇所について2車線(片側1車線)の暫定開通を早期に実現できるよう工事等を進めています。
今回の事故で市民や事業所に多大な不便と迷惑をかけました。一日も早く皆さまが安定した日常生活を取り戻せるよう国や県、関係機関等と連携し、全力で取り組みたい。










