埼玉新聞

 

やさしい塩気を含んだ濃厚な風味が特徴 キャビアの生産に取り組む埼玉・川越の「大野農場」 豚舎だったスペースに水槽を設置 2018年からチョウザメを養殖

  • 「キャビアの認知度を広めたい」と語る大野恵子さん=川越市内

    「キャビアの認知度を広めたい」と語る大野恵子さん=川越市内

  • 「キャビアの認知度を広めたい」と語る大野恵子さん=川越市内

 地下水を張った水槽で悠々と、チョウザメが泳ぐ。川越市北部の芳野地区。富士山や秩父の峰々を一望できるこの土地で、「大野農場」はキャビアの生産に取り組んでいる。同社取締役の大野恵子さん(47)は「海のない埼玉でも養殖の魚が食べられることを、気にかけてもらえるといい」とアピールする。

 大野農場は黒豚の繁殖や飼育を一貫経営で行い、ハムやソーセージの製造・販売、レストランを展開してきた。

 大野さんは会社勤務を経て、大野農場に入った。社長で父親の賢司さん(74)、同じ取締役で妹の佐藤由美子さん(45)と共に会社をけん引する。

 キャビアの生産は、黒豚と平行して「プラスアルファの生産物ができたら」との発想から生まれた挑戦だ。元は豚舎だったスペースに容器や水槽を設け、「ベステル」というチョウザメの養殖を始めた。2018年のことだ。

 チョウザメからキャビアを取るには、稚魚から育てて7年ほどかかる。毎年約1千匹の稚魚を仕入れ2~3年したところで雌雄を判別するが、この時点で「100匹も残らない」という。大野さんは「生き物なので世話を間違えると死んでしまう。変わらない日々を続けていかなければならない」と説く。

 24年には2尾から取れたキャビア「小江戸キャビア」(15グラム入り8千円=税別=ほか)の販売に、初めてこぎ着けた。つやを帯びた黒色の粒は柔らかく、やさしい塩気を含んだ濃厚な風味が特徴だ。

 同社の店舗や市内の洋食店の食材で提供されている。口に運んだ客は「川越で生産されたことに感動してくれる」という。

 「まだ確立できていない技術がある。ある程度の量を生産し、認知度を広めたい」。柔和な眼差しでそう語った。

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