埼玉新聞

 

2年続けてゼロに 最多は2013年の1万8千匹超も近年は急激に減少 埼玉・行田の利根大堰を遡上するサケの数 専門家は「黒潮が北上、温暖化が原因だろう」

  • 利根大堰のサケ遡上数

    利根大堰のサケ遡上数

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 利根川中流の行田市と群馬県千代田町の間にある利根大堰(おおぜき)を遡上(そじょう)するサケの数が、2025年は2年連続でゼロだったことが5日、分かった。茨城県神栖市と千葉県東庄町にまたがる利根川河口堰でも、ほとんど確認されていないことが判明。専門家は地球温暖化の影響で暖流の黒潮が北上、サケが餌にする動物プランクトンが減り、海へ出た稚魚が成魚になるまで生き残れなくなったとみている。

 利根大堰での調査は、堰を管理する水資源機構利根導水総合管理所(行田市)が1983年から毎年実施。10月1日~12月25日に行っている。観測方法が変わっているため単純比較はできないが、2013年に最多の1万8696匹を記録。翌14年以降は急激な減少に転じ、24年は初めて遡上が確認できなかった。同管理所によると、25年の速報値は5日にまとまり、2年続けて0匹だったという。

 同機構利根川河口堰管理所(千葉県東庄町)が、おおむね毎年10~12月にサケの遡上を調べている利根川河口堰でも同様だ。15年は6425匹だったが、24年に0匹となり、25年も12月22日の時点でわずか2匹にとどまる。

 国立海洋研究開発機構副主任研究員のユリン・チャンさん、東京大学大気海洋研究所教授の森田健太郎さん、国立水産研究・教育機構グループ長の本多健太郎さんは25年9月、利根川でサケの遡上が見られなくなった原因について、論文を発表。サケが餌とする動物プランクトンが減っていることが分かった。

 プランクトンの成長に必要な栄養塩は、寒流の親潮で豊富な一方、黒潮には少ない。利根川河口沖は親潮と黒潮がぶつかる海域だが、黒潮が北上する傾向が続いているという。海洋物理が専門のチャンさんは、「黒潮は20~30年間にわたって徐々に北上してきた。これは、地球温暖化が原因だろう」と指摘する。

 魚類の生態学を専門分野とする森田さんは「文化活動への影響も心配だ。今の状況が何年も続くと、人々がサケに関わろうとする意識が薄れてしまうのではないか」と懸念。利根導水総合管理所は、行田市内の小学生を対象に観察会や稚魚の放流会を行っていたが、23年以降は中断したままだ。同管理所によると、魚道の様子を見学できる大堰自然の観察室を訪れる観光客らも激減しているという。

 3人の研究者は、サケの遡上が利根川で再び確認できるようになるかどうかは分からないとしている。ただ、北海道でもカラフトマスの遡上が減少しており、魚類の生態学が専門の本多さんは「日本の食文化や漁業にとっても大きな問題。危機的な状況を知ってほしい」と語った。

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