埼玉県内十大ニュース 2025年を振り返る
【10】岩井姉妹、米ゴルフツアー初V/双子で快挙達成 涙と笑顔
今年から米女子ゴルフに活躍の場を移した岩井明愛(あきえ)、千怜(ちさと)(いずれも川島町出身、埼玉栄高出)が偉業を成し遂げた。5月に妹の千怜が「リビエラマヤ・オープン」で初優勝を果たすと、8月には姉の明愛が「ポートランド・クラシック」で初の栄冠に輝いた。米女子ツアーの姉妹制覇は史上4組目。双子としては初の快挙だった。
妹の頂点から約3カ月後の勝利に明愛は「家族や仲間の応援のおかげで勝つことができた」と涙を流した。グリーン上で姉と抱き合った千怜は「ほっとした。本当にうれしい」と満面の笑みがこぼれていた。
【9】狭山事件 石川一雄さん死去/再審制度など問題提起
狭山市で1963年に女子高校生が殺害された狭山事件で無期懲役判決で服役後に仮釈放され、再審を求めていた石川一雄さんが3月11日、狭山市内の病院で誤嚥(ごえん)性肺炎のため死去した。86歳。
これまでに再審請求が2度棄却。2006年から申し立てた第3次再審請求は石川さんの死去により打ち切られ、妻の早智子さんが第4次再審請求を申し立てた。
24年10月、静岡県の一家4人殺害事件で再審無罪が確定した袴田巌さん(89)とは約6年間、東京拘置所で共に過ごし、支援者らと再審制度などについても問題提起を行っていた。
【8】川口、蕨戸田のごみ施設火災/収集中止、他自治体で処理
川口、蕨、戸田各市のごみ処理施設で火災が発生し、生活に大きな影響を及ぼした。
川口市朝日の「朝日環境センター」では1月3日に「ごみピット」で出火。市が一般ごみ収集を一時中止したことで、市内の収集所が一時、ごみであふれる事態となった。
蕨、戸田両市のごみ処理を行う戸田市美女木北の「蕨戸田衛生センター」では7月12日、粗大ごみ処理施設で出火し、電源設備が損傷した。
両施設ともごみ受け入れが不可能となり、処理を他自治体などに依頼。出火原因はいずれも不明だが、リチウムイオン電池など発火物が混入した可能性が指摘されている。
【7】鶴ケ島老人ホーム殺人/入居の高齢女性2人犠牲
鶴ケ島市若葉2丁目の介護付き有料老人ホーム「若葉ナーシングホーム」で10月15日未明、入居者の高齢女性2人が殺害される事件が発生した。県警は発生から約7時間後に現場から約250メートル離れた路上にいた同施設の元職員の男(22)を確保し、殺人容疑で逮捕した。2人目の女性に対する殺人容疑で再逮捕され、12月に鑑定留置された。
男は2人への殺人容疑を認めた上で、自身の周辺環境や社会などに不満を募らせ、「(事件直前に)人間関係のトラブルがあり、蓄積していた怒りが増大して『人を殺したい』という気持ちが高まった」などと供述しているという。
男は2023年5月から昨年7月まで施設に勤務。入り口やエレベーターには暗証番号の電子錠が設けられていたが、暗証番号を入力して侵入していた。施設が男の退職後も暗証番号を変更していなかったことが判明し、施設の防犯対策に関する課題が浮き彫りになった。
【6】浦和実、初の選抜で4強/野球部の歴史刻む快進撃
選抜高校野球に初出場の浦和実が、4強まで勝ち進む快進撃を見せた。秋季大会で初の県制覇、初の関東4強と歴史を塗り替え続け、勢いそのままに乗り込んだ甲子園でも実力を遺憾なく発揮した。
1回戦はエース石戸が滋賀学園打線を6安打完封し、3―0で勝利。2回戦は1点差の八回に集中打で5点を奪い、東海大札幌を8―2で下した。聖光学院(福島)との準々決勝は、延長タイブレークまでもつれたが、十回に浦和実打線が一挙8得点を追加。12―4で勝利しベスト4入りを決めた。続く準決勝で智弁和歌山に敗れたものの、大会の台風の目となる存在感を示した。
1975年の創部以来、春夏合わせて初の甲子園出場となった今大会。選手を率いたのは浦和実一筋37年の辻川正彦監督。準決勝の後には「この舞台でやらせてもらえて感謝しかない。選手たちがよく成長してくれた」と語り、甲子園を後にした。
【5】女性初の高市内閣が発足/黄川田氏、片山氏が入閣
自民党の高市早苗総裁は10月21日、衆参両院本会議の首相指名選挙で第104代首相に選出された。女性の首相就任は憲政史上初。皇居での首相任命式と閣僚認証式を経て自民党、日本維新の会による連立政権が正式に発足した。
高市首相はこれに先立つ会見で「決断と前進の内閣だ。強い日本経済をつくり上げ、外交・安全保障で日本の国益を守り抜く」と述べた。政治の安定のため野党に協力を呼びかけるとし「基本政策と矛盾しない限り、原則として政策提案を受け入れる方向で前向きに議論する」とした。
閣僚人事では、保守系議員連盟「創生日本」から多く起用し、保守色を鮮明にした。自民党総裁選での自らの選挙責任者を務めた黄川田仁志衆院議員(埼玉3区)を地方創生担当相で初入閣させた。
重点政策を巡って、首相と同様に創生日本のメンバーで積極財政派とされる片山さつき参院議員(さいたま市出身)を財務相、政治信条が近い小野田紀美氏を外国人共生担当相に充てた。
総裁選で争った4人のライバルのうち小泉進次郎氏や茂木敏充氏のほか、官房長官だった林芳正氏を総務相として処遇。小林鷹之氏は党政調会長に就け、旧派閥を中心とする党内バランスにも配慮を示した。
【4】猛暑 最高気温を更新/鳩山で41・4度、国内2位
今夏、日本は猛暑となった。埼玉も例外ではなく、8月5日には鳩山町で気温41・4度を記録。昨夏まで国内観測史上最高タイだった熊谷市で記録した2018年7月23日の41・1度を上回った。
関東甲信は今夏、6月28日ごろに梅雨明けした。平年は7月19日ごろに明けるが、大幅に早く本格的な夏が到来。埼玉では既に梅雨の間から、真夏を思わせる暑さが度々訪れた。6月17日には熊谷市で37・2度まで上がるなど、県内の観測地点全8カ所で今年初となる猛暑日を観測。越谷市内では、65歳女性が熱中症の疑いで死亡した。
8月5日は群馬県伊勢崎市で、国内観測史上最高を更新する41・8度まで上昇。鳩山町の気温は当時、同2位となった(現在は2位タイ)。このほか、県内では熊谷市が40・7度、秩父市と所沢市で40度となり、4カ所が40度以上の暑さに襲われた。
気温35度以上の猛暑日、同30度以上の真夏日は、6~8月の夏季に観測した日数も記録的だった。熊谷市では猛暑日が47日、真夏日は75日を記録。秩父市では猛暑日が34日、真夏日は71日に達した。いずれも平年に比べて24~30日ほど多い。もともと寒暖差の比較的大きい内陸県埼玉では、夏の暑さがいっそう顕著になりつつある。
【3】参院選 埼玉は自国立参/2人が初当選 現職に明暗
第27回参院選は7月20日、投開票が行われ、埼玉選挙区(改選数4)は、国民民主党新人の江原久美子氏と参政党新人の大津力氏がそれぞれ初当選を果たした。自民党現職の古川俊治氏は4選、立憲民主党現職の熊谷裕人氏は再選を決めた。
公示直前に負傷し、松葉づえと車いすで選挙戦に臨んだ江原氏は、知名度不足が不安視されたものの、前県知事の上田清司参院議員や党幹部が連日応援に入り、政権批判票の受け皿となった。大津氏は交流サイト(SNS)で積極的に発信し、10代から50代まで幅広い支持を得て躍進。無党派層や自民支持層にも食い込んだ。
古川氏は逆風の中で、医師としての観点から「地域の医療提供と社会保障に自分の責任で道筋をつける」と訴え、60代以上の支持を集めた。熊谷氏は学びの機会均等など、子どもたちのための政治を強調。「少数与党に追い込むことで政策を転換する」と物価高対策を訴えた。
公明現職の矢倉克夫氏は2期12年の実績と政策提案で猛追したものの、目標の47万票に届かず、5番目となり明暗を分けた。共産現職の伊藤岳氏も消費税5%の緊急減税などを掲げて他陣営を追いかけたが、及ばなかった。
埼玉選挙区には現職4人を含む9政党9人と諸派・無所属6人の計15人(うち女性6人)が立候補し、前回22年の過去最多に並んだ。投票率は56・88%で、前回を6・63ポイント上回った。期日前投票者数は前回から38万2711人増え、134万9259人と県内の国政選挙で過去最多を更新した。
【2】県内で全国植樹祭/「活樹」の理念、全国に発信
1959年の寄居町金尾山会場以来、66年ぶりの県内開催となった「第75回全国植樹祭」は5月25日、「人・森・川 つなげ未来へ 彩の国」をテーマに、秩父ミューズパーク(秩父市、小鹿野町)を主会場に盛大に開催された。天皇陛下をはじめ、全国から4558人が参加。式典や記念植樹、展示会、ステージパフォーマンスなどを通して、森林資源の循環と木材利用の拡大をすすめる「活樹(かつじゅ)」の理念を全国に発信した。
秩父市街地では、秩父祭と川瀬祭の「笠鉾(かさぼこ)・屋台の特別公開」が行われた。秩父祭の笠鉾2基(中近、下郷)は、普段の祭典では見ることができない3層の笠と花を付けた姿で登場し、注目を集めた。同市中町の旧ベスト電器前では式典のパブリックビューイングも行われ、当日の市街地は約6万人の観光客らでにぎわった。
天皇陛下は式典当日、秩父神社(同市番場町)にお立ち寄りになり、秩父祭の笠鉾・屋台を見学後、小鹿野子ども歌舞伎の小学4年生2人による歌舞伎の「口上」をご鑑賞された。式典会場では、県の木であるケヤキなど3種の苗木を植えられ、ヒノキ、アカシデの種をまかれた。県内で森林づくりの奉仕活動に取り組んでいる「緑の少年団」の児童らが介添えを務めた。
所沢市のエミテラス所沢、深谷市の深谷テラスパーク、久喜市のモラージュ菖蒲の3商業施設にはサテライト会場が設置された。式典のライブ中継やステージイベント、県産木材製品の展示、木工体験などが行われ、計4550人の来場者が緑豊かな郷土への理解を深めた。
【1】八潮の道路陥没事故/救出難航、影響は長期化
1月28日午前9時50分ごろ、八潮市の県道松戸草加線中央一丁目交差点内で道路が陥没し、トラック1台が転落した。車内に取り残された男性運転手(74)の救助は下水や土砂に阻まれ難航。男性は5月2日、下水道管内で見つかり死亡が確認された。事故現場周辺の通行止めが続き、地元住民への補償問題など影響は長期化している。
陥没箇所には1983年に供用開始された中川流域下水道管が通り、管が閉塞(へいそく)した可能性があることから、県は流域の12市町に下水道法に基づく使用制限を依頼し、下水道使用を控えるように呼びかけた。使用制限は2月12日に解除されるまで続いた。
土砂やがれきを押し流す下水、硫化水素などの複合的な障害が救出活動を阻み、2月5日の調査で下水道管内に運転席部分らしきものが発見されても、消防・自衛隊は救命・救出について明確な回答を用意できず、土木的措置によるアプローチが続いた。
県は2月11日、下水を迂回(うかい)させる仮排水管のバイパス工事と、運転席部分に向けた掘削を開始する方針を固めた。日本では内径3メートルを超える流域下水道管の本格的な更新は行われたことがなく、工事は手探りで進められた。内閣府は1月29日朝の段階で今事案が災害には当たらないとしたものの、その後の調整で1月29日にさかのぼって災害救助法を適用した。
有識者9人で構成する原因究明委員会(委員長・藤野陽三城西大学学長)は8月、東京都内で第3回会議を開催。道路陥没の原因として「県が管理する中川流域下水道の硫化水素によって腐食した下水道管に起因するものと考えられる」と結論づける中間報告を公表した。









