31種の新たな苗木育む 天皇陛下がお手植え 歴史刻む 66年ぶり2回目の県内開催 埼玉・秩父で全国植樹祭
天皇陛下の臨席の下、秩父ミューズパーク(秩父市、小鹿野町)を主会場に5月25日に開催された「第75回全国植樹祭」。記念植樹事業で全国各地の招待者約2400人が植えたモミジ、コナラ、クヌギ、ケヤキなど31種約5300本の苗木は現在、同パーク内のゴルフショートコース跡地(約0・8ヘクタール)で、日の光をいっぱいに浴びながら健やかに育っている。
植樹地を管理する県全国植樹祭推進課の西川千陽さん(30)は「スクールステイ事業で県内各地の子どもたちが心を込めて育てた苗もたくさん植えられている。一苗でも多く、高く、大きく育ってほしい」と思いを語る。
苗木や成木の樹皮を食べてしまうシカの侵入を防ぐため、式典翌日に高さ約2メートルの柵を設置。夏場は雑草や低木を刈り取る下刈り作業を行った。「夏の猛暑が心配されていたが、水分を保持しやすい土地だったので特に影響はなかった。式典が無事に開催でき、活樹(木を切って、使って、植えて、育てる)の大切さを全国に発信できて一安心」と、西川さんは顔をほころばせる。
植樹祭事業の一環で、県は10月に「植樹式」を本庁舎南玄関前で開き、大野元裕知事らがヒノキなどの苗木植樹や、スギなどの種まきを行った。同月に春日部夢の森公園(春日部市下大増新田)で開催された「第4回森づくりフェスタ」では、式典で天皇陛下が使用された御鍬(おくわ)などの木製品を展示した。
秩父ミューズパークでは11月、植樹祭の秩父地域アフターイベント「秩父の森ジャンボリー」が行われた。会場のシュガーハウス「メープルベース」の広場には、木の葉のお風呂やカエデのワークショップ、市の出展ブースなどが設置され、多くの来場者でにぎわった。
主催したメープルベース代表の井原愛子さんは「この地で全国植樹祭が開催された事実は永遠に残り続ける。式典を行って終わりにするのではなく、森林を守り育てる取り組みを今後も県や自治体などと力を合わせながら継続させたい」と語った。
天皇陛下は式典当日、秩父神社(秩父市番場町)に立ち寄り、小鹿野子ども歌舞伎や秩父夜祭で使用される笠鉾(かさぼこ)・屋台を鑑賞された。
天皇陛下の御前で歌舞伎の「口上」を披露した、町立小鹿野小学校4年の安出茉紘さん(9)と森瑛茉さん(9)は「ニュースにたくさん載って、多くの人に声をかけてもらった。とても貴重な1年だった」と振り返る。
安出さんと森さんは、11月に小鹿野文化センターで行われた「第53回町歌舞伎・郷土芸能祭」に歌舞伎役者として出演。現在は、石川県小松市で来年出演予定の歌舞伎上演に向けて、日々稽古を重ねている。安出さんは「三味線も習い始めたので、もっと活動の幅を広げたい」、森さんは「歌舞伎でもっと全国を回りたい」と笑顔で話した。
【第75回全国植樹祭】 1959年に寄居町金尾山で行われた第10回以来、66年ぶり2回目の県内開催となった。本会場の秩父ミューズパークには天皇陛下をはじめ全国から4558人が参加。式典で天皇陛下はケヤキなどの「お手植え」や、ヒノキなどの「お手播(ま)き」をされた。所沢、深谷、久喜市内のサテライト会場には4550人の来場があり、式典のライブ中継やステージイベントなどを楽しんだ。









