埼玉新聞

 

【独自】「虹波」、百日ぜき患者投与か 旧陸軍開発、医学誌に記録

  •  1949年3月発行の「慶応医学」。百日ぜき患者へ虹波を投与した記録がある(国立国会図書館デジタルコレクションより)

     1949年3月発行の「慶応医学」。百日ぜき患者へ虹波を投与した記録がある(国立国会図書館デジタルコレクションより)

  •  1949年3月発行の「慶応医学」。百日ぜき患者へ虹波を投与した記録がある(国立国会図書館デジタルコレクションより)

 太平洋戦争中に旧陸軍が機密に開発を進め、ハンセン病患者などに臨床試験で投与された薬剤「虹波」が、百日ぜき患者にも投与されていたとみられることが21日、分かった。戦後に発行された慶応大医学部の医学誌に記録があった。専門家によると、百日ぜき患者への虹波投与を具体的に示す記録が明らかになったのは初めて。

 虹波は写真の感光剤を応用した薬剤。旧陸軍が戦時中、寒冷地での凍傷治療などを期待して研究を進めた。強制隔離されたハンセン病患者の他、原爆被爆者や結核患者で臨床試験を実施したことが明らかになっている。現在、厚生労働省が所轄する熊本県のハンセン病療養所「菊池恵楓園」が実態調査をしている。

 頭痛や嘔吐など激しい副作用があり、投与中に死者が出た例もある。日弁連法務研究財団は2005年3月の「ハンセン病問題に関する検証会議最終報告書」で「まったくの人体実験」と指摘した。

 慶応大は取材に「百日ぜきは当時、致死性の高い小児感染症で、研究者が試していた治療法のひとつだったと考えられる」と回答した。

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