埼玉新聞

 

母はどんなにつらいか…女性2人死亡、無施錠の個室で切られる 各部屋、出入り口を施錠していた老人ホーム…ナイフを持つ人、廊下を歩く 容疑の22歳逮捕、元職員で今は無職 遺族「悲しみをこらえられない」

  • 入所者の女性2人が血を流し、病院に搬送される事件が発生した老人ホーム「若葉ナーシングホーム」=15日午後5時半ごろ、鶴ケ島市若葉2丁目

    入所者の女性2人が血を流し、病院に搬送される事件が発生した老人ホーム「若葉ナーシングホーム」=15日午後5時半ごろ、鶴ケ島市若葉2丁目

  • 東武東上線若葉駅の位置(中央左)=国土地理院HPから

    東武東上線若葉駅の位置(中央左)=国土地理院HPから

  • 入所者の女性2人が血を流し、病院に搬送される事件が発生した老人ホーム「若葉ナーシングホーム」=15日午後5時半ごろ、鶴ケ島市若葉2丁目
  • 東武東上線若葉駅の位置(中央左)=国土地理院HPから

 15日午前4時55分ごろ、鶴ケ島市若葉2丁目の介護付き有料老人ホーム「若葉ナーシングホーム」で、入所者の高齢女性2人が血を流して倒れているのが発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。県警は同日午後、女性1人に対する殺人の疑いで、施設元職員の無職男(22)=熊谷市箱田4丁目=を逮捕した。「刃物で刺して殺したことは間違いない」と供述し、別の1人の殺害もほのめかしているという。県警は西入間署に特別捜査班を設置し、動機や詳しい経緯を調べる。

 死亡したのは、入所者のいずれも無職の女性(89)と女性(89)。

 逮捕容疑は15日午前1時48分ごろから午前2時4分ごろの間、施設内の個室で、女性を刃物のようなもので切り付けるなどして殺害した疑い。

 捜査1課によると、15日午前4時55分ごろ、施設職員が「入院患者の高齢女性2人が血を流している」と110番して事件が発覚。女性らは4、5階の個室のベッド上であおむけで倒れており、2人とも上半身に複数の刃物とみられる傷があったという。2人は救急搬送時に意識はなかった。

 施設は5階建てで、60人超が入所していた。当時は男性職員1人が勤務しており、15日午前0時ごろ、男性が介助のため全ての部屋を訪れた際に異常はなかった。午前3時半過ぎに再度介助のため5階を訪れると、女性の両目にあざができ、耳付近から出血しているのを発見。上半身からの出血も確認し、施設管理者らに連絡した。

 男は犯行後に現場から逃走。周囲を警戒していた警察官が午前8時40分ごろ、現場から東に約250メートル離れた路上で容疑者に職務質問し確保した。その後の聴取で確保場所から450メートル南西の路上で、血痕のようなものが付着した刃物のようなものや、犯行時に着用していたとみられる衣服などが入ったバッグ、使用していたとみられる自転車が発見され、午後0時40分ごろに逮捕した。

 捜査関係者によると、ナイフを持った人物が施設の廊下を歩いている様子が施設の防犯カメラに写っていた。

 施設職員の話によると、男は昨年7月ごろまで勤務していたが、これまでに県警に対してトラブルの相談などはなかった。施設の1階には正面入り口のほか、複数の出入り口があるが事件当時は施錠されていた。入所者の各部屋には施錠設備があるものの、2人の個室には鍵がかかっていなかったという。

 施設は川越市下広戸の医療法人「恵雄会」が運営している。ホームページによると、施設の定員は入居者が64人で、デイサービスが35人。鉄筋コンクリート5階建てで、2~5階に居室がある。

 施設側は取材に対して「現時点ではお答えできない」としている。

 女性の遺族は15日、県警を通じて「突然の出来事に非常に混乱している。母はどんなにつらい思いをしただろうか、考えるほど悔しく悲しみをこらえることができません」とコメントを発表した。

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