埼玉新聞

 

埼玉も広がる不安…ロシアのウクライナ侵攻でどんな影響が 原発再稼働を求める声、今後出てくる可能性も

  • ウクライナ侵攻、県内企業も注視 原燃料費さらに高騰も

 ロシアのウクライナ侵攻で、県内企業にも不安が広がる。木材、自動車関連、エネルギーなど幅広い分野で今後の影響を注視している。高値が続く原燃料費の上昇、サプライチェーン(供給網)の動向にも懸念を示す。停戦交渉は難航が必至とみられるものの、状況の好転へ早期の沈静化を望む声もある。

■「今後見通せず」

 輸送機関連では県内にも生産拠点を置くホンダがロシア向け4輪車と2輪車の輸出を一時停止した。4輪車は米国で、2輪車は国内などで生産し、輸出していた。日米欧など主要国の経済制裁で決済や資金の回収ができない、物流網が混乱するリスクなどを考慮し、停止を決めた。

 自動車向け部品を製造する中小企業の60代男性経営者はアルミや重油、灯油の仕入れ価格が上昇している点を危惧する。アルミは自動車の軽量化が進行し、利用されるケースが増加。近年はロシア産への依存度は低くない。ロシアのウクライナ侵攻で原料費がさらに上昇すれば、納入先の完成車メーカーの生産量に影響することが懸念され、「今後を見通せない」と声を落とす。

■コスト増を危惧

 液化天然ガス(LNG)などの高騰による電気代やガス代などの上昇も懸念材料。極東ロシアからの天然ガスの輸入が制約されれば、その分は電気代などの上昇につながる可能性もある。その上昇を部品代に転嫁するのは難しい。「部品材料の供給制約や価格上昇と同様に、エネルギー関連のコスト増加が心配だ」

 別の自動車部品を製造する中小企業の70代男性経営者は電気代の上昇抑制に向け、「国内で原発再稼働を求める声が出てくる可能性がある」と見通す。

 商社経由で海外産の木材を購入しているポラテック(越谷市)。輸入木材の全体の割合は欧州材が多く、ロシア材は1割程度。ただ部材によっては割合は高い。天井仕上げ工事に使う野縁材は8割を占める。

 ウッドショックの影響を低減しようと、ロシア材の取扱量を増やそうと動いていた矢先、このような状況になった。「今のところロシア材が急に入ってこないといった状況は想定していない」としつつ、リスク軽減へ他の海外産地からの調達を検討することもありうると指摘した。

■供給網の動向は

 ロシアへの制裁措置として、日米欧など主要国は「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの銀行の排除を決めたが、県内の金融機関は冷静だ。武蔵野銀行は「ロシアへの送金はあまりなく、大きな影響はない」。ただ顧客が関わる材料など供給網の動向を注視しているという。

 教育現場でも警戒感が強まる。日本語学校「さきたま国際学院」(行田市)は、ウクライナからの入学予定者と連絡が取れていない。当初は昨年に入学予定だったが、新型コロナウイルスの影響で、入学が遅れていた。予定者は祖母方に避難しており、祖母方はインターネット環境が整っていないため、連絡が取れない状況が続いているという。

 国が表明したウクライナ避難民の受け入れに対し、同校は高齢者やその家族の避難民の入居支援を行うことをホームページで発表。「取り組みがウクライナに対する人道支援の一助になり、ウクライナ、世界に平穏が一日も早く訪れる事を祈念しております」としている。

 ぶぎん地域経済研究所は「ロシアの原材料や製品を扱う供給網になっている企業は間接的な影響を受ける可能性がある。原燃料費の高騰で企業物価指数も上昇しており、消費マインドにも影響を与えるのではないか」との見解を示す。

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