埼玉新聞

 

蜷川幸雄さん創設の若手演劇集団、5日から埼玉で最後の公演 若手俳優らの活躍に成果、今公演で活動を終了

  • さいたまネクスト・シアターの茂手木桜子さん(左)と手打隆盛さん。茂手木さんは「蜷川さんと過ごした時間は、私の細胞になっている」と語る=7月28日、彩の国さいたま芸術劇場

  • 「雨花のけもの」の稽古をするさいたまネクスト・シアター(提供写真、撮影・宮川舞子)

 川口市出身の演出家・故蜷川幸雄さんが創設した若手演劇集団「さいたまネクスト・シアター」が5~15日、彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市中央区)で最終公演「雨花(うか)のけもの」を上演する。シェークスピアなど古典戯曲に挑戦し、演劇賞の優秀作品賞受賞や海外公演などの実績を残した。蜷川さんの教えを胸に、メンバーは2009年からの集大成に向け、稽古に励んでいる。

 ネクスト・シアターは09年、若手俳優育成を目的に、1225人の中からオーディションで選んだ44人で結成。現在1~4期生の14人(平均年齢34歳)が所属する。「雨花のけもの」は、演出家で俳優の岩松了さんが演出、若手劇作家の細川洋平さんが新作を書き下ろした。富裕層が社会になじめない若者をペットとして売りさばいている設定。「ペット」の様子がおかしくなり、それが両方に影響を及ぼしていく、というあらすじの群像劇だ。

 1期生で、舞台を中心に活動する手打隆盛さんは「蜷川さんには、2万回ぐらい『死ね』と言われたけど、それが気にならないほど、稽古場はいつも白熱していた。学んだことは数えきれない。蜷川さんは演劇を通して『生きることはどういうことか』を教えてくれた。受け継いだものを実践していきたい」と感謝を口にする。ネクストで12年に上演した作品では思うように役が演じられず、蜷川さんに言われて足に砂の重しをつけて稽古した強烈な思い出も。「あれはきつかったですね。でも今も変わらず必死です」と笑う。

 「何の遠慮もなく、お互いを見せあえる仲間。悔いなくみんなとの時間を味わいたい」と意気込むのは、1期生の茂手木桜子さん(41)。蜷川さんはどんな小さな役にも目をかけ、「1人でも気を抜いたらその場面はだめになる」と誠実に指導していたと振り返る。「頂いた役を丁寧にやりたい。私はお弁当のハンバーグ(主役)にはなれないけど、本格的に作られた、すごくおいしいマカロニサラダやたくあんになりたい」と目指す俳優像を語る。

 無名の俳優で結成されたネクスト。現在では舞台や映像で活躍するメンバーもおり、一定の成果は上がったとして今公演で活動を終了する。手打さんは「ネクストの一人一人の力が集結してすごいパワーが生まれるところを見てほしい」と話している。

 問い合わせは、劇場チケットセンター(電話0570・064・939)へ。

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