埼玉新聞

 

<東京五輪>重量挙げレジェンド・三宅宏実、笑顔で会場を後に「完全燃焼した」 父「次の人生の財産に」

  • 三宅宏実選手

 5度目の五輪挑戦は記録なしで戦いを終えた。女子49キロ級の三宅宏実はジャーク99キロを3本失敗し、「こういう終わり方はふがいないけれど、諦めないで取り組んできて、この舞台に無事に立てて良かった」と思いを込めた。

 五輪が1年延期されたことで体はいい状態で臨めたという。スナッチ1本目で74キロを成功し、このまま波に乗っていきたかった。だが76キロを連続で失敗。ジャークでは、99キロの2本目が分かれ道だった。成功したかに思われたが、シャフトを挙げた際に腕が曲がっていたと判断されたようだ。

 そして最終試技も「気持ちの弱さが出てしまった」と、挙げられず。その瞬間、悔しげな顔をして、目を閉じた。

 最後は不本意な終幕かもしれないが、2004年のアテネ五輪から5大会連続出場で柔道の谷亮子と並んで日本勢女子の夏季最多出場を果たした重量挙げ界のレジェンドの功績は図り知れない。

 昨年3月に延期が決まり、さまざまな葛藤がある中、「1年長くウエートリフティングができるボーナスタイム。みんなといい時間が過ごせた」と、集大成の舞台に向けて準備してきた。

 一番近くで見守ってきたきた父の義行コーチも「皆さんに背中を押してもらい、5度目の東京にチャレンジできたことで十分。よく頑張ったと思う。今日の失敗から学んだことを次の人生の財産にしてほしい」と力を尽くした娘をねぎらった。

 21年間、打ち込んできた競技人生に区切りをつける意向だ。「出し切ったのでガス欠。しばらく重いものは持たなくていいかな。完全燃焼しました」。目を真っ赤にしながらも、最後は三宅らしい柔和な笑みで会場を後にした。

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