埼玉新聞

 

抜群のカツカレーも看板メニュー、一番人気はサクサクとんかつ 大宮・とんかつ割烹山下軒 宴席料理も定評

  • 看板メニューとなっているボリューム満点のカツカレー

  • 揚げどきを見極めて調理する誠一さん=大宮区仲町

  • 歴史ある店舗が並ぶ路地で存在感を放つ山下軒

 大宮駅東口から徒歩5分、旧大宮区役所のすぐ近く。変貌を遂げる同所周辺で、昔ながらの路地にある「とんかつ割烹(かっぽう)山下軒」。歴史あるさまざまな店舗が並ぶ中、料亭のような落ち着いた店構えとこだわりの味で人気を集める老舗とんかつ店だ。店長を務めるのは4代目の山下誠一さん(51)。昼時には近隣のサラリーマンなどでにぎわうほか、コロナ禍で宴会がほとんどなくなり団体客が少なくなっているが、工夫を凝らした宴席料理にも定評がある。

 山下軒は大正に入ってすぐ、高島屋デパートの辺りで創業。40年ほど前、3代目の山下彰さんの代に区画整理などの事情で現在の場所に移転し、店を構えた。

 近年、再開発で町並みが大きく変わりつつある大宮駅東口だが、同店の周囲には、歴史を物語る店舗が数多くある。氷川神社や大宮アルディージャの旗も手掛ける大正5(1916)年創業の「辻旗店」をはじめ、同11(22)年に建てられた洋館の「西原小児科医院」、昭和初期から3代続く「タクワ写真館」など。

 こうした地で昔ながらのとんかつで親しまれていた中、彰さんは病気のため52歳の若さで急逝。まだ成人前だった誠一さんは日本を代表する社交場として知られる、東京丸の内の「東京會舘」などで8年ほど修行した。その間、誠一さんが店を継ぐまでは、彰さんの妻で、誠一さんの母親享代(たかよ)さんが女将(おかみ)として調理も行い、店を切り盛りしていた。78歳となった現在も、毎日元気に店に出て客に声を掛けている。

 同店の一番人気はもちろん、サクサクのとんかつ。群馬の豚肉などおいしいと感じた銘柄をその都度、仕入れているという。油はラード100%で、新鮮さにこだわっている。

 カウンターに座ると、目の前でジュッと揚げてくれ、切る音はザクッザクッと耳に心地よい。こうした流れるような作業を眺めながら待つことができるのも魅力だ。

 東京會舘仕込みの誠一さんは、宴会の和食コースのメニューにトンカツを取り入れるなど、昔ながらの味を新しい試みで提供している。ほかにも誠一さんが始めたカツカレーは、辛さ控えめの濃厚でまろやかな欧風カレーとの相性が抜群。今では同店の看板メニューの一つになっている。

 大宮アルディージャの試合前に験を担ぎにカツを食べに来たという大宮区の会社員(28)は「脂身も少なく、サクッとしておいしい」と完食。客の8割は男性というが、女性同士で食べに来ることも少なくない。

 「父親の姿を見てきたので、継ぐのだろうな、と自然に思っていた」と誠一さん。「妻と女将の家族経営で、昔ながらのとんかつにこだわりながら続けていきたい」と話した。

 【メモ】 さいたま市大宮区仲町2の33の1。電話048・641・0167。営業時間は午前11時~午後2時、午後5時~同9時(コロナ禍のため現在は同8時まで)。定休日は、日曜・祝日。

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