埼玉新聞

 

幻の熊谷桜が見頃 源平合戦での故事にちなむ早咲き桜 熊谷・石上寺で一足早く春の到来告げる

  • 見頃を迎えた熊谷桜を見つめる岡安隆哲住職=熊谷市鎌倉町の石上寺

 源平合戦で活躍した武士の熊谷直実の名を取った「熊谷桜」が、埼玉県熊谷市鎌倉町の石上寺で見頃を迎え、一足早く春の到来を告げている。

 熊谷桜は八重咲きの小ぶりな花を付ける。早咲きの品種で、熊谷直実が一の谷合戦で先陣争いをした故事にちなんで名付けられた。明治時代以降に姿を消していき、幻の桜となっていた。石上寺も江戸時代から熊谷桜があったが、熊谷空襲で焼失したという。

 その後、熊谷の市民グループ「桜ファンクラブ」が日本花の会結城農場に熊谷桜があるのを確認。苗木を増やし、市内などに植樹している。石上寺には96年から植樹を続け、現在は約60本になった。今年は例年よりやや早く、3日ごろに開花。見頃は今週いっぱいぐらいまで。

 熊谷桜の苗木は、熊谷直実の子孫が移り住んだ宮城県気仙沼市で東日本大震災の津波被害にあった人たちを応援しようと、熊谷の市民たちが贈り続けている。11日の地震発生時刻に、同寺で岡安隆哲住職(75)が慰霊の鐘を突いた。岡安住職は「気仙沼でもそろそろ熊谷桜が咲き始めているころだと思う。花を見て元気な気持ちになっていただければ」と話していた。

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