埼玉新聞

 

奇跡の再会…広島で被爆の女性、75年目で知った無傷の理由とは 平和のメッセージ伝える物語が音声舞台に

  • 打ち合わせをする土田和美さん(右)と暁つきさん=昨年12月、草加市内(提供写真)

  • 音声舞台「はぁちゃんへの手紙」のチラシ

 広島で被爆した土田和美さん(80)=埼玉県草加市=は昨年10月、75年ぶりに被爆地の長崎で、2歳年上の幼なじみと再会を果たした。会いたいと願い続けて実現した奇跡。平和のメッセージを伝える物語として次世代に伝えたいと、音声舞台「はぁちゃんへの手紙」が制作され、今月13日からオンライン配信される。

 土田さんは1945年8月6日、長崎大元副学長で名誉教授の正木晴彦さん(82)=長崎市=と一緒に広島で被爆した。当時は4歳と6歳。「はぁちゃん」「和美ちゃん」と呼び合っていた。被爆直後にバス停で別れてから、消息は分かっていなかった。昨年7月、広島を訪れた土田さんは、正木さんが長崎にいることを偶然知る。手紙を出して返信が届き、75年ぶりに電話で会話することができた。

 ピカッと光った瞬間、正木さんは手をつないでいた土田さんを包み込むようにして守った。2人は爆風に吹き飛ばされ、正木さんは重いやけどを負い、土田さんは無傷だった。被爆した瞬間の記憶がない土田さんは、75年目にして無傷の理由を初めて知る。

 昨年10月13日、土田さんは長崎を訪れ、正木さんと再会を果たす。「よー来た、元気だったか」「元気だったよ」。75年ぶりに笑顔で抱き合った。「あの瞬間は覚えていないので、全部教えてもらった。想像もしていない助けられ方だった」と振り返り、命の恩人に感謝した。正木さんの案内で長崎市内を巡り、正木さんの家族とも会った。

 「はぁちゃんへの手紙」は、同じ草加に住む俳優の暁つきさん(41)が一人で演じる。暁さんは土田さんの被爆証言や正木さんへの手紙、被爆者の証言集を読むなどして脚本を書き上げた。劇団シェークスピア・シアターに約10年在籍していた暁さんは「土田さんの体験は、シェークスピアに通じる。会いたいと願った人と再会できた幸せを描きたい」と語った。

 土田さんは「75年ぶりに真実が分かり、恩人と再会を果たすことができた。この物語は私の被爆証言の代わりで、平和へのメッセージとして次世代につないでくれるもの。暁さんは一生懸命、取り組んでくれた。多くの人に聞いてほしい」と話している。

 音声舞台は約1時間で、土田さんと暁さんの対談も収録。今月13日午前10時~21日午後9時半まで、動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信する。料金千円。8日までに申し込む。暁さんは今年9月、草加市内で一人芝居による公演を予定している。

 申し込み・問い合わせは、暁さん(Eメール:merici.akatsuki@gmail.com)へ。

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