埼玉新聞

 

人口減少で消滅可能性の都市の一つ…「日本一暮らしたいまち」へ飯能の魅力PR、埼玉ハンノウ大学開校

  • スコッチウイスキーのテイスティング教室の様子(ハンノウ大学事務局提供)

  • 学長の小野まりさん=飯能市仲町

 埼玉県飯能市の魅力を市内外の人へアピールし「日本一暮らしたいまち」を目指す地域活性化の取り組み「埼玉ハンノウ大学」が昨年9月、開校した。まち全体をキャンパスに見立て、さまざまな講座を開いている。自然を多く残し都心へも比較的近い半面、人口減少が進み「消滅可能性都市」の一つに挙げられる飯能市。学長を務める小野まりさん(59)は「多様な体験ができる飯能って面白いと感じてもらい、若い世代が定着してくれれば」と期待を寄せる。

■次世代に伝える

 小野さんは、日本ナショナルトラスト協会の公認画家の夫と共に訪れた英国へのスケッチ旅行を切っ掛けに2002年、飯能からロンドン郊外のコッツウォルズに移住、18年に帰国した。

 「英国では大都会での生活よりも田園風景が広がるカントリーサイドで暮らす方がステータスが高い。都市圏で働き、定年後はカントリーサイドが英国人の理想」と説く小野さんにとって、飯能の環境は「日本のコッツウォルズ」。海外から飯能を見ることで見落としていた魅力に気付いたという。

 飯能市は旧名栗村と合併した05年の約8万4900人をピークに人口が減少し、現在は7万9千人余り。14年には若年女性の人口が40年までに5割以上減る消滅可能性都市の一つとされた。

 「飯能の魅力を私たちが次世代に伝えていかないと歴史的建造物や文化がなくなってしまうのでは、との不安もあった」。帰国後に東京都渋谷区のまち全体をキャンパスとするNPO法人「シブヤ大学」の講演依頼を受けたことを切っ掛けに「ハンノウ大学」を構想。小野さんは「(飯能の)魅力を知ってもらえれば消滅可能性都市から脱皮できる」と考える。

■おもしろいまち

 ハンノウ大学の事務局は、中心市街地に残る大正時代に建築された旧飯能織物協同組合(国登録有形文化財)の建物。小野さんは「この歴史ある建物や豊かな自然を残したい」との思いも明かし、「古い建物を残すのは哀愁や郷愁ではなく教育。文化として残すことは、次世代にとっての誇りになる」と話す。

 これまでに開催された講座は飯能市の山間部に住む英国人が講師を務めた「英国流のクリスマスクッキング教室」や「スコッチウイスキーのテイスティング教室」のほか、市内にある吾野宿の歴史や今後のまちづくりを考えるなど多岐にわたる。「飯能っておもしろい」と思ってもらえるブランディングを目指している。

 講座は一つのテーマごとに受講者を募るが、現在は新型コロナウイルス感染症の影響で開催を控えている。小野さんは「外から飯能を訪れた人に講座を通じてわくわく感を提供していきたい。地域で活動している方々にはハンノウ大学というプラットフォームを使ってもらい、共に民間ベースで発信したい」と力を込めた。

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