埼玉新聞

 

<新型コロナ>つらい、店を開けるだけで経営悪化 観光スポット川越で客半減 GoTo恩恵少ない理由

  • 観光客が途絶えた川越一番街=2日午後1時ごろ、川越市幸町

 埼玉県で新型コロナウイルスの感染者が初めて確認され、1日で1年が経過。政府は県内などに発令した緊急事態宣言の期限を1カ月間延長することを決めた。長引く外出自粛や休業要請、時短営業は観光業界にも多大な影響を与え続けている。県内屈指の観光スポット・川越市は、2019年に観光客数が過去最高を更新したが昨年は一転して半減した。蔵造りの町並みで知られる「一番街商店街」の組合員たちは、感染対策に配慮しながら営業を続け、商店街一体でコロナ禍を乗り越えようとしている。

 川越市観光課によると、昨年1年間、同市内に訪れた観光客数は約385万人。過去最高を記録した19年の775万7千人と比較すると50・4%減少した。外国人客数も19年は過去最高だったが、20年は前年比87・5%減の3万9千人にとどまった。

 土産、飲食店など104事業所が加盟する川越一番街商業協同組合の藤井清隆理事長(47)は「商店街の客足は、県が発表した数字以上に減っている。外国人の他、年配者の観光も少なかった」と話す。

 昨年は4月の緊急事態宣言を受けて、多くの店舗が休業。小江戸川越春祭りや川越まつりなど、一番街周辺の祭りは全て中止になった。政府は昨年、観光支援事業「Go To トラベル」を実施したが、藤井理事長によると、川越に訪れる観光客は日帰りが多いため、他の観光地と比べると恩恵は少なかったという。

 藤井理事長は、観光客の減少が顕著になった昨年4月に新理事長に就任。以来、組合員たちの多くの苦境話を耳にしてきた。「店を開けるだけで経営が悪化するから、平日は閉めるようにした」「(夜まで営業する飲食店とは違い)補償金が出ないので、緊急事態宣言中は、ただ暇になるだけ」「2月8日の宣言解除から、新たな気持ちで営業再開を考えていたのに」―。

 同組合では、川越市の観光気分を疑似体験できる「バーチャル一番街」の構築など、感染拡大に配慮しながら散策できる取り組みを進め、観光客の回復を図る。藤井理事長は「どんなに苦境に立たされても、組合員の方たちは国や県の要請に従い、感染対策徹底を心掛けて営業している。皆と助け合いながら、緊急事態宣言が明けるのを待ちたい」と話した。

 川越一番街の土産店で働く40代女性は「できれば緊急事態宣言を解除してほしかった。遅れれば遅れるほど、客足が戻るのに時間がかかってしまう」と肩を落とす。一番街の店舗の大半は午後8時前に閉店するため、国からの協力金がもらえない。「緊急事態宣言の影響は、観光地に一層響くので、県から支援があればありがたい」と女性は望む。

 市内で酒屋を営む男性は「宣言延長は仕方ないが、昨年のように持続化給付金の支給があれば、観光地などにも恩恵が来るはず」と話す。

 同店は、市内の飲食店数軒に酒を納品しているため、飲食店の売り上げが経営を左右するという。「飲食店の取引業者にも補助金が出ると聞くが、宣言延長で支給日がさらに遅れるだろう。この1年間、どの業種もつらい思いをしたと思うが、数年後に『あの時は大変だったね』と、お互い話せる日が早く来てほしい」と男性は願っている。

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