埼玉新聞

 

<大栄翔初優勝>涙ぐむ母親、夢のような親孝行 埼玉出身力士で初の快挙、声詰まらせ「こんなに早く」

  • 大栄翔関の初優勝が決まり、支援者から花束を受け取り、喜ぶ母親の高西恵美子さん(左)と兄の一直さん=24日午後5時すぎ、朝霞市本町の中華料理店「後楽園」

 「本当に親孝行の息子です。よく頑張った」と涙ぐむ母親。「夢のような体験をさせてもらい、心の底からありがとう」と支援者。埼玉県朝霞市出身で埼玉栄高出、追手川部屋(草加市)の大栄翔関=本名・高西勇人さん=が埼玉県出身の力士で初優勝の快挙を果たした大相撲初場所の千秋楽。24日夕、対戦相手の隠岐の海関を破り、優勝が決まった瞬間、朝霞市内の中華料理店と市役所会議室は、集まった後援会「大栄翔関を励ます会」の会員らなどの歓喜と感謝の渦に包まれた。

 午後4時50分。テレビ画面で大栄翔関が土俵に上がると、午後3時すぎから朝霞駅前の中華料理店「後楽園」に集まった支援者らは「頑張れよ」「勝つんだよ」と大声で声援を送った。母親の恵美子さん(58)と兄の一直さん(30)も固唾(かたず)をのんで対戦を見守った。

 約5分後、隠岐の海関が土俵を割った瞬間、大歓声が上がり、恵美子さんは「今までの努力は無駄ではなかった。いずれ優勝すると思っていたが、こんなに早く来るとは」と声を詰まらせた。一直さんも「自分の相撲を貫いたことが優勝につながった。頑張ったと言ってあげたい」と喜んだ。

 恵美子さんなどによると、大栄翔関は小学校から市内の道場で相撲を始め、小さい時から関取になるのが夢だった。高校はオファーのあった埼玉栄高に入学。3年時に全国大会で個人3位、団体2位の成績を収めた。部屋入り後は序ノ口と三段目、十両でそれぞれ優勝を果たした。

 2015年の入幕後、地元の支援者らが後援会を立ち上げ、恵美子さんらは毎場所、支援者が常連客だった「後楽園」に駆け付け、応援している。

 大栄翔関の快挙に、後援会の栗原友介会長は「すごいぞ大栄翔。本当によくやった。努力のたまものです。厳しい稽古に黙々と努力し、大きな成果を手にしたことに力をもらった」と偉業を称賛した。同会は地元商工会などと連携し、各店舗で優勝セールなどを開催する予定という。

 一方、朝霞市は同日午後4時から市庁舎会議室で応援会を開催。富岡勝則市長や市議会議員、市体育協会、市相撲連盟の関係者ら約30人が集まり、大型スクリーンで声援を送った。大栄翔の優勝を受け、市は「懸垂幕や横断幕などを含めて祝うイベントを検討したい」としている。

 富岡市長は「史上初の快挙を大変うれしく思います。コロナ禍による暗いニュースが多い中、とても元気を頂き、市の代表としてお祝い申し上げます。けがや病気に留意され、三役昇進、大関、横綱を目指して精進を重ね、今後の更なる活躍を期待いたします」とコメントを発表した。

 追手風部屋のある草加市の浅井昌志市長は「コロナ禍で大変な状況にある方々にも勇気や希望を与えてくれた。草加市で開催される青少年相撲大会で、優勝杯の『追手風杯』を子どもたちに渡していただけることを心待ちにしています」とコメントした。

 大栄翔関を中学時代に指導をした入間少年相撲クラブの西沢正夫総監督は「教え子に感謝したい。価値のある一番で自分の相撲を取り切った。これからも自分を曲げないで信じた道を突き進んでほしい」と話した。

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