埼玉新聞

 

秩父夜祭、来年に期待 昨年は2日間で24万4千人の客 夜祭の大切さ、改めて感じた秩父人「寂しい」

  • 新型コロナウイルスの影響で、32年ぶりに秩父神社の表参道である番場通りを進む御神幸行列=3日午後6時10分ごろ、秩父市番場町の番場通り

 日本三大曳山(ひきやま)祭に数えられる秩父神社例大祭「秩父夜祭」の大祭が3日、埼玉県秩父市番場町の同神社などで行われた。今年は新型コロナウイルスの影響で、屋台や笠鉾(かさぼこ)の巡行が32年ぶりに中止となり、神事は規模縮小で実施。例年は一年で最も盛り上がる日だが、関係者らは「寂しい」と口々に物足りなさを感じ、「来年は通常通りに」と期待を込めた。

 秩父夜祭は毎年12月2、3日に行われ、京都の祇園祭、飛騨の高山祭とともに日本三大曳山祭に数えられる。2016年12月には、「山・鉾(ほこ)・屋台行事」の一つとして、ユネスコ無形文化遺産にも登録された。昨年は2日間で24万4千人が訪れており、豪華絢爛(けんらん)な冬の祭典に熱狂していた。

 屋台や笠鉾の巡行が中止となるのは昭和天皇が闘病していた1988年以来で32年ぶり。当時は秩父神社の境内に屋台収蔵庫がある本町屋台が飾り置かれていたが、今年は屋台の組み立てを断念。神楽殿では秩父神社神楽が奉納されたが、境内の観光客は例年より大幅に少なく、露店もほとんど姿が見えなかった。

 「まさかまたこんな年が来るとは」と話したのは本町屋台保存会会長の長谷川純司さん(60)。屋台や笠鉾の上から曳(ひ)き子を鼓舞する囃(はや)し手で、本町では襦袢着(じゅばんぎ)と呼ばれる祭りの花形を32年前に務める予定だった。「今年はしょうがないが、ふわふわした感じがする」と残念がった。

 寂しさを感じているのは中心市街地に住む住人だけではない。本町は町会外の住民たちで組織された「本町達磨(だるま)会」に支えられている。長谷川さんが営む酒屋「麻屋商店」を訪れていた同会のメンバーの池田直哉さん(35)は「屋台は出ないけど、独りぼっちで家にいるのは寂しかった」と明かした。

 市中心部にある「秩父ふるさと館」の2階でそば店「そばの杜」を営む鈴木寛明さん(39)は昨年の秩父夜祭で、宮地では囃し子と呼ばれる囃し手を担当。昨年は大役を務め、地域の良さを再認識した。「今年は当たり前だったものがなく、夜祭の大切さを改めて感じた。来年は活気ある夜祭になれば」と力を込めた。

 秩父夜祭は秩父神社の女神・妙見様と武甲山の男神・龍神様が年に1度、逢瀬を楽しむ祭りといわれる。午後6時になると、同神社から龍神様を乗せた御神幸行列が神々の出会うと場所とされる御旅所へ出発。今年は規模を縮小し、御神輿(みこし)は出ず、コースも32年ぶりに同神社の表参道である番場通りを往復して短縮された。

ツイート シェア シェア