埼玉新聞

 

浦高魂で50キロ走破、浦和高の最大行事「古河マラ」開催 伝統の強歩大会、県警・保護者がサポート

  • ネックゲイターを着け正門から走り出す生徒ら=さいたま市浦和区の県立浦和高校前

  • フェースシールドを着けた保護者から消毒を受けて栗橋関門内に入る生徒ら=久喜市の栗橋公民館敷地

 県立浦和高校(さいたま市浦和区、水石明彦校長)の伝統行事「第62回強歩大会(通称・古河マラ)」が1日、開催された。同校から県をまたぎ、茨城県古河市をゴールに50・2キロを走破。コロナ禍で、開催が危ぶまれたものの学校関係者や生徒、保護者らが感染対策に取り組み、沿道地域の協力も得て実施へとこぎ着けた。

 さいたま市浦和区の同校から白岡、久喜、幸手、加須の各市を抜け茨城県古河市を目指す片道コース。7カ所の「関門」を制限時間内に走破、7時間でゴールしなくてはならない。歩いてではとても間に合わないことから古河マラソン、通称「古河マラ」と呼ばれる。県警と共に、800人近い保護者が交通整理や関門での飲食などをサポート、十数名のOB医師も協力参加する同校の"最大行事"だ。

 今年はスタート時の密集を緩和するため、1500メートル走のタイムを基に20人ずつのグループに分けて出発。全員が首から口元を覆うスポーツ用のネックゲイターを着け、中には表面に「浦高魂」と書き込んだ生徒も。住宅地付近を走る最初の岩槻関門まで装着を必須とした。

 浦高から42・4キロ地点、フルマラソンを突破した距離にある、最後の休憩所を兼ねた栗橋関門(栗橋公民館敷地)。飲み物などを提供するコーナーには飛まつ防止シートを張り巡らせ、生徒が持参したコップにドリンクを注ぐ。「各関門は全て一方通行にし、入り口でまず消毒。とにかく感染予防を徹底した」と、PTA体育部の竹内美和子さん(48)はフェースガードに手袋姿で説明する。茨城県に入る手前の利根川橋近くで洋品店を営む柿沼淳子さん(66)は「嫁いで35年、欠かさず応援してきた。生徒に声を掛けると応えてくれ、元気をもらっている。今年も出会えてうれしい」とほほ笑む。多くの生徒たちが「最も苦しい場所」と話す最後の土手を降りるとゴールの古河第一小学校はもう目の前。今年は完歩率72%で無事に終了した。

 他者と競うのではなく自己の強さを鍛えることが目的のため、1位は「先頭到着者」と呼ばれるのみで、メダルや賞状もない。卒業時のアンケートでは「こんなにつらく、また心に残る行事はない」と、常に「充実していた学校行事」の筆頭に挙がる。

 1年生の内耀太さん(16)は「入学後、伝統行事が次々と中止になり残念だったが、初めて体験できた。少し“浦高生”に近づけたような気がする」と疲れの中にも喜びの表情。3年生の大西悠士郎さん(18)は「思い入れが強い大切な行事。今回は特にみんな意気込みが違った。ゴールまでの支えや応援は忘れられない。これからの力になると思う」と、かみ締めるように話した。

 同校の卒業生でもある三宅邦隆教諭は「生徒たちに貴重な成長の機会を与えることができた。教員、そしてOBとしても良かったという気持ち。関係者や地域の皆さんに感謝したい」と感慨深げだった。

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