埼玉新聞

 

能登半島地震、埼玉のクルド人ら炊き出し「助けるのは当たり前」 栄養価が高い食事4千食、カイロ、防寒着など提供へ トルコ地震で日本に支援され「恩返ししたい」」 キッチンカーで駆け付け被災者ら感謝

  • 被災地に向かうクルド人らとキッチンカー(タシさん提供)

    被災地に向かうクルド人らとキッチンカー(タシさん提供)

  • 避難所で炊き出しを行うタシ・ティフィキさん(「ハッピーケバブ」関係者提供)

    避難所で炊き出しを行うタシ・ティフィキさん(「ハッピーケバブ」関係者提供)

  • 被災地に向かうクルド人らとキッチンカー(タシさん提供)
  • 避難所で炊き出しを行うタシ・ティフィキさん(「ハッピーケバブ」関係者提供)

 能登半島地震の被災者らを支援しようと、県内に住むクルド人らの有志が10日、石川県内の被災地で炊き出しを始めた。川口市のケバブ店経営者らが中心となり、約3日間、店の看板メニューであるケバブサンドやスープなどを約4千食分を振る舞う。川口市の「ハッピーケバブ」代表のタシ・ティフィキさん(33)は、昨年2月に故郷・トルコ南部などで発生した地震で日本から寄せられた支援に感謝し、「誰かが困っていれば、助けるのは当たり前。恩返しをしたい」と意気込む。

 タシさんは地震発生時、県内の商業施設にいた。「ニュースで次第に被害が大きくなっていく状況を見て、居ても立ってもいられなくなった」と振り返る。当時タシさんの脳裏をよぎったのはトルコ南部地震。現地の親戚らが被災し、不安を覚えたが「多くの日本人の方が優しい言葉をかけてくれて、募金など支援をしてくれたのがうれしかった」という。

 被災地の中でも被害が大きい石川県珠洲市によると、同市の一部地域のボランティア活動は、国際交流NGO「ピースボート」が一時的に管理している。タシさんらもピースボートを通じてボランティアを申し出て、同市健民体育館などの避難所での炊き出しを行うことが決まった。

 雪が降る厳しい寒さの中、避難生活を送る現地の被災者のため、カイロや防寒着などを用意。中でも最も力を入れたのが「チョルバ」と呼ばれるスープの仕込みだ。トマトをメインにビタミンなどが多く含まれるレンズ豆、すりつぶしたニンニクやパプリカ、ジャガイモ、タマネギなどの野菜入りで栄養価が高い。普段はトウガラシで辛みを付けるが、多くの人の口に合うように優しい味付けに。「このスープを食べて温まってほしいのはもちろんだけど、しっかり栄養が取れるものを食べることで少しでも元気になってほしい」と話し、約7時間かけて従業員と汗をかいた。

 9日午前、物資や食材を乗せたキッチンカーが川口市を出発。翌10日午前から、避難所で生活する被災者らに温かい食事500~600食を提供した。タシさんらがケバブを手渡すと、被災者らは笑顔を見せ「わざわざ遠い所から来てくれてありがとう。おいしい」と話しかけてくれたという。

 タシさんによると、避難所周辺でも地割れや外壁の剥落などがあり、不便な生活が続いている。タシさんは「自分の故郷であった地震を思い出して心が痛くなった」と語り、「困っている人を助けるチャンスがあることに感謝して、多くの人に食事を届けられるように頑張ります」と力を込めた。
 

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