埼玉新聞

 

埼玉は“追い風”吹いている 新年迎えた大野知事、熊谷の「北部拠点」誕生へ膨らむ構想 まだ誰も知らない姿とは 男女別学の公立高も“共学化”議論「地域によって条件が随分違う。主語が埼玉県でいいのか」

  • 新年に向け「課題に立ち向かう礎をつくる」と話す大野元裕知事=昨年12月、県庁知事室

    新年に向け「課題に立ち向かう礎をつくる」と話す大野元裕知事=昨年12月、県庁知事室

  • 新年に向け「課題に立ち向かう礎をつくる」と話す大野元裕知事=昨年12月、県庁知事室

 埼玉新聞社は2024年の始まりに当たり、砂生敏一編集局長が大野元裕知事にインタビューし、大野知事は「歴史的な課題に対して敢然と立ち向かうための礎をつくる。引き続き埼玉県には追い風が吹いていると思うので、これを大きな成長の年、あるいは持続可能な発展の礎として確固たるものとする」と新年の抱負を述べた。

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが2類から5類へ移行し、ポストコロナ元年と位置付けた23年の取り組みを踏まえ「労働生産人口が減る中で、生産性の向上と不断の行財政改革の両方が必要。一つ一つの仕事を切り分けるタスク・トランスフォーメーション(TX)を進める」とした。

 昨年8月に2期目の再選を果たし、「頂いた信任を課題に対する力に変え、県民に対して責任を果たしたい」と決意を込める。熊谷市の北部地域振興交流拠点の整備についても、「県民や事業者の利便性を主語にして考えたい。人口動態や産業構造が変化する中で、北部地域の特性を地域の活力に」と語った。

■1期目とは違ったものが見えているか。

 「政策については、自然災害が激甚化・頻発化すると想定せざるを得ない。もちろん何もない方がいいが、1期目と同じ危機管理を考えなければいけない。社会的課題を支える経済を含め、ベースとしての経済、まちづくりは、より切迫した形になった。コロナ禍の2~3年、残念ながら失われた部分がある。待ったなしでやらなければいけなくなった。課題は同じで、県の5カ年計画で掲げた12の針路と54の分野別施策も延長線上にある。そういったことをしっかりと成し遂げていく」

 「さらには女性活躍推進、高齢者、障害者、性的マイノリティー、あらゆる人たちが活躍できる社会づくりをしたい。これらのベースになるのはDXを前提とした不断の行財政改革。社会保障関連経費だとか、人口増加期に整備した施設の老朽化で更新が余儀なくされ、放っておくと、単に経費が出て行って終わってしまう。県の持続的発展を可能にするためには、生産性の向上と同時に不断の行財政改革の両方が確実に必要。DXを行財政改革と絡めていくためには、一つ一つの仕事を切り分けていくタスク・トランスフォーメーション(TX)を進める必要がある」

■熊谷市の北部地域振興交流拠点の構想は。

 「財政も厳しくなる中、現行の県庁を(そのまま)新しくするのでは意味がない。行財政改革を進めていけば、おのずと働き方が変わる。手続きや相談のオンライン化が進めば、県民は庁舎まで行かなくていい。フリーアドレス、サテライトオフィスが拡大すれば、職員側も最適な時間や場所を選択して仕事ができる。そこで生産性が向上する。県民・事業者にとって利便性が高い、職員にとって働きやすい、こういったことを検討するベースができた。デジタルを前提として全てを想定する先行モデルとして、北部地域振興交流拠点を位置付けている。DXを前提としたオフィスってどんなものか、実は誰もまだ知らない。それをわれわれは役所の在り方として、ショールーム、未来の県庁舎の試金石としたい」

 「産業振興機能を中心にこれまでも検討してきたが、そこに未来型オフィスをどうつくるか。北部地域の地域機関、市の機能を集約するワンストップサービス。それどころか、そんなものを置かなくてもいいかもしれない。皆さんがどこからでもアクセスできるということは、北部拠点に北部拠点らしい機能の中から削られるものが出てくることになる。県民や事業者の利便性を主語にして考えたい。それと同時に北部地域の特性を考える必要がある。農業、食品関連産業が強いので、デジタル技術の活用の観点も加えながら、人口動態や産業構造が変化する中でも、特性を地域の活力に変えるためには、北部拠点をどう使うのか考えていきたい。一般的に持たれる役所のイメージとは変わってくるのではないか」

■県内の公立高校で男女別学から共学化が議論されているが。

 「知事から独立した教育委員会が学校教育を所管し、教育委員会で十分に議論するべきもの。また、共学か、別学かという問題については果たして主語が埼玉県でいいのかという議論もある。例えば浦和という地域においては、狭い中に男子校と女子校が両方あり、共学も選択できる。少し北部に行くと、共学1校しかないところもある。与えられた条件によって随分違うのではないかと思っている。あるいは在校生が一番よく分かる。イデオロギーでいいとか悪いとかという話ではなく、実際に判断ができる多くの関係者から、丁寧に意見を聞いていくことがとても大切」

※詳しいインタビュー内容は、2024年1月1日付け本紙に掲載。
 

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