埼玉新聞

 

高1女子死亡事故、はねた運転手に罰金 不起訴は不服…遺族、検審議決前に略式起訴「幅寄せが原因」

  • 自宅で仏壇に手を合わせる母親の千穂さん。横には友人と一緒に笑顔で写る由惟さんの写真が飾られている=15日

 2017年に八潮市で高校1年の児玉由惟さん=当時(16)=が死亡した交通事故から約2年半。遺族はこれまで、男性運転手に下された不起訴処分について、検察審査会に審査を申し立てるなど行動を起こしてきた。昨年末には、越谷区検が検審の議決前に男性運転手を略式起訴した。遺族は「子を失うという悲しい思いをする人は私たちで最後にしたい」と訴えている。

 事故が発生したのは17年10月19日朝。自転車で通学途中だった由惟さんは、後ろから来たトラックにはねられ死亡した。

 当日は雨が降っていたが、由惟さんが自宅を出る午前6時半ごろには小雨に。「雨のたびに車で送って、甘やかしてはいけない」。母親の千穂さんは、部活動の朝練習に向かう娘を「行ってらっしゃい」と見送った。

 約30分後、由惟さんが通う高校から事故の連絡が入った。「けがが痛いのを我慢しているのだろうか」。そう心配して病院へ向かう千穂さんに、到着を待つ救急隊員から何度も入る電話―。不安を覚え、「娘は生きているんですよね」と尋ねたが、「娘さんは闘っています」としか答えてもらえなかった。

 由惟さんが通学で使う道と同じルートで通勤していた父親の望さんは、千穂さんから事故の連絡を受け、いつも通る道が通行止めになっていたことを思い出した。「あの事故だ」。そう思い病院へ急いだ。

 次々と親族が病院へ到着する中、処置室で目にしたのは、人工呼吸器を着けて横たわる由惟さんの姿。体は冷たく、医師の手で人工呼吸器が外された。娘の死を告げられた瞬間だった。

 事故を巡っては18年12月、さいたま地検越谷支部が、過失は認められなかったとして、運転手を不起訴処分に。遺族は処分を不服として、19年3月、さいたま第1検察審査会に審査を申し立てた。

 「自転車の追い抜き方や追い抜き後の車線の戻り方に原因があると感じた。これが不起訴になるならば、事故はなくならないと思った」と望さん。検審には、運転手による幅寄せ行為が自転車の転倒の原因になったなどとする申立書と、トラックのドライブレコーダーの映像などを解析して民間会社が作成した映像を提出した。

 事態が動いたのは昨年12月。検審の議決前に、越谷区検が男性運転手を自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪で略式起訴、罰金80万円が確定した。起訴状によると、自転車の追い抜きが完了する前に車を左側に寄せた過失により、転倒した由惟さんに衝突し死亡させたとされる。

 「相手の過失が認められた」。しかし、娘の命に値段は付けられない。「人の命が80万円なのか」とやりきれない気持ちも残る。野球部のマネジャーとして懸命に部活動に取り組み、パティシエになる夢も持っていた由惟さん。事故は娘の将来だけでなく、家族や友人など周りの人の未来も変えてしまった。

 「同じように悲しい思いをする人をもう出してはいけない。動かないと何も変わらない」。遺族は今後、署名活動などを通して、交通事故の厳罰化を求めていく予定だ。

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