埼玉新聞

 

一緒に「嫁入り」の花、初開花…92歳男性方のリュウゼツラン 「いつ咲くんだろう」見守った妻は昨年他界

  • 妻富美子さんが大事にしていたリュウゼツランの開花に感激した臼田正行さん

    妻富美子さんが大事にしていたリュウゼツランの開花に感激した臼田正行さん

  • 臼田さん宅に植えられてから64年たって初めて花を咲かせたリュウゼツラン=19日午前、埼玉県桶川市北2丁目

    臼田さん宅に植えられてから64年たって初めて花を咲かせたリュウゼツラン=19日午前、埼玉県桶川市北2丁目

  • 妻富美子さんが大事にしていたリュウゼツランの開花に感激した臼田正行さん
  • 臼田さん宅に植えられてから64年たって初めて花を咲かせたリュウゼツラン=19日午前、埼玉県桶川市北2丁目

 「もう自分では見られないと思ってた。本当に感激している」と話すのは臼田正行さん(92)。埼玉県桶川市北2丁目の自宅に、数十年に1度しか咲かないという多肉植物「リュウゼツラン」が大空にそびえ、黄色の花を咲かせた。

 臼田さんの妻富美子さんが1957年に結婚した際に、小さな鉢植えで持参した。庭に地植えし、「いつ咲くんだろう、咲かないのかな」と口癖のように話しながら、時折水やりをして成長を見守ってきた。富美子さんは昨年4月に他界、花を見ることはかなわなかった。

 「(妻は)見れなかったんだなあ」と臼田さんは花を見上げてポツリ。長女の育子さん(59)は「ずっと咲かなかったので、母に見せてあげたかった。父が生きている間に一度咲いてほしいと思っていたので、本当にうれしい」と笑顔で話した。

 リュウゼツランは、臼田さん宅の2階にも届くほどの高さ。今春、子株のようなものがたくさんでき、真ん中の茎が竹のようにすくすく伸びてきて、数日前に突然花を咲かせた。リュウゼツランの存在を知っていた近所の人たちも、珍しい花を一目見ようと訪れてくる。

 山村ミツエさん(86)は「前を通る時にいつも見ていたけど、こんな雄大な花が咲くとは思わなかった。驚いた」と感動した様子。臼田さんは「みんなに見てもらって喜んでもらえたらいいね」と穏やかにほほ笑んだ。

 ◇

 リュウゼツランは、北米のメキシコや中南米の熱帯地域で自生するリュウゼツラン科の単子葉植物で、数十年をかけ成長したのち、1度だけ花を咲かせ枯れてしまう。肉厚で鋭いトゲのある大きな葉を竜の舌に例えて「竜舌蘭」の和名がつけらている。メキシコのハリスコ州テキーラ市では、テキーラの古い産業施設群とテキーラの原料にもなるリュウゼツランの景観が、2006年に世界遺産登録された。

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