埼玉新聞

 

<熊谷6人殺害>ショック大きい…被告に無期懲役、死刑判決を破棄 妻子亡くした男性…裁判官に怒り憎しみ

  • さいたま地方裁判所=さいたま市浦和区高砂

 熊谷市で2015年9月、小学生姉妹を含む男女6人が殺害された事件で、強盗殺人と死体遺棄、住居侵入の罪に問われたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(34)の控訴審判決公判が5日、東京高裁で開かれた。大熊一之裁判長は「被告は心神耗弱の状態だった」として、一審さいたま地裁裁判員裁判の死刑判決を破棄し、無期懲役を言い渡した。

 判決理由で大熊裁判長は、ナカダ被告の精神障害が犯行に及ぼした影響を直近の状況のみで検討した一審判決について、「精神鑑定の評価に看過しがたい誤りがあって是認できない」と指摘。「妄想上の追跡者から身を隠すために被害者方に侵入し、被害者を追跡者とみなしたか、警察に通報されると考えて殺害に及んだ可能性があり、統合失調症の影響が非常に大きかったことは否定できない」とした。

 一方、遺体を隠したり、血を拭き取るなど証拠隠滅と受け取れる行動を繰り返していたことから、「自発的意思も残されており、違法性も理解していた。犯行は妄想や精神的な不穏に完全に支配されていたとは言えず、心神耗弱の状態だった」と認定した。

 その上で「強固な殺意に基づく残忍な犯行で、6人の命が奪われた結果は誠に重大。責任能力の点を除けば極刑で臨むほかない。心神耗弱による法律上の減軽をした上で無期懲役が相当」と述べた。

 弁護側は心神喪失による無罪を主張していた。

 一審さいたま地裁判決は18年3月、ナカダ被告が統合失調症だったとした上で、「金品入手の目的に沿った一貫したまとまりのある行動を取った」と完全責任能力を認め、求刑通り死刑を言い渡した。弁護側は判決を不服として控訴していた。

 判決によると、ナカダ被告は15年9月14~16日、熊谷市見晴町と石原の住宅3軒に侵入し、田崎稔さん(55)と妻美佐枝さん(53)、白石和代さん(84)、加藤美和子さん(41)と長女で小学5年の美咲さん(10)、次女で小学2年の春花さん(7)=年齢はいずれも当時=を包丁で刺して殺害するなどした。

 妻子3人を亡くした遺族の男性(46)は5日、東京都内で記者会見し、「どれだけ悔しい気持ちで一日一日を過ごし、4年半やっとの思いで生きてきたか。死刑から引っくり返されて、またゼロからのスタートかと思うと、精神的なショックが大きい。裁判官に怒りと憎しみがある」と話した。

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