埼玉新聞

 

<川口いじめ>絶対に許されない…武南署の捜査書類に「いじめ受けた生徒に原因ある」 虚偽認め母親に謝罪

  • いじめ被害者の母親は「警察で虚偽記載はあってはならないことだと思う」と語った=2日、武南署前

  • 市が裁判所に証拠として提出し、虚偽記載と分かった武南署の書面「管理票」

 川口市立中学校でいじめを受けた元男子生徒(17)が市に損害賠償を求めている裁判を巡り、市がさいたま地裁に証拠として提出した武南署の捜査関連書面に虚偽の記載があった問題で、同署と県警本部少年課、文書課の担当者らが2日、同署で原告の母親と面談し、書面の内容に事実と違う記載があることを認めて謝罪し、訂正を約束した。

 この裁判で原告の元男子生徒=県立高校2年生=はいじめで不登校になったのは学校や市教委の対応が不適切だったためだとして、市に対し550万円の損害賠償を求めている。

 原告は1年生の3学期にほかの生徒からシャツの後ろ襟首をつかまれて首を絞められ引き倒されたとして2016年10月に被害届を提出していた。

 問題の書面は警察署の担当者が捜査の経過などを日記のように記録した「管理票」。当時の校長が今年7月に情報開示請求し、県警本部が開示した。16年12月20日に、保護者や市教委も出席し学校で開いた会議で、署員が説明した内容が書かれていた。

 具体的には(1)関係の少年全員から聴取したが被害日時が特定できない(2)加害生徒が原告のシャツを引っ張ったことは全員が認めたが、その前に原告が加害生徒に「2回足蹴りしていた事実があり」、原因を作ったのは原告自身と思量された(3)弁護士も母親も理解し、納得した―という内容。

 母親はこの当時、警察署からは「関係生徒に事情聴取したところ、証言が一致しないことから先に蹴ったということは立証できない」と説明を受けていた。この際に同行した弁護士2人は同席を拒否されたため「理解や納得」などはしていないとしている。

 母親は「当時警察から説明を受けていたことと全く違う内容で驚いている」として、訂正と原因究明を求めていた。

 面談を終えた母親は「訂正は当然だが、警察が事実ではない記録を作成することは絶対に許されないことだと改めて言いたい」と語った。

 さらに母親は「特に『先に足蹴りしていた事実があり』という記述について、本部担当者から『本部として調べた結果、先に蹴ったというのは事実ではない』と改めて説明を受けた」と話した。

 同署の奥冨真吾副署長は「事実と違うことを書いたことが分かり、謝罪した。当時の担当者に聞いたところ、学校での会議がある数週間前に関係者に聴取した内容を書き足した。そのほかのことは年月がたち詳しくは覚えていない、と説明している。実際に言っていないことを書いた。訂正結果は早急に伝える」と説明した。

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