埼玉新聞

 

がん治療の最前線、切らずに治す「サイバーナイフ」注目 熊谷・関東脳神経外科病院で導入 治療の部位拡大

  • インタビューに答える今枝真澄さん

 がん治療の最前線でいま、切らずに治すサイバーナイフが注目を集めている。テレビドラマでも放射線技師の仕事が脚光を浴びた。熊谷市の関東脳神経外科病院(清水暢裕院長)は2005年、東日本で初めてサイバーナイフ治療を導入。全国でも3番目に治療を開始し、今年6月末時点で4324例の実績を持つ。1年間で約300人の新しい患者を受け持つという同院の放射線科医師、今枝真澄さん(40)に話を聞いた。

―サイバーナイフ治療とは。

 放射線治療は「人に優しい」がん治療である。サイバーナイフ(定位放射線治療装置)は、がん細胞にピンポイントで放射線を照射することができる。つまり正常な組織を守りながらがんとその周囲のみを正確に狙い撃ち、がん病巣を消失させる効果がある。転移性の脳腫瘍や体幹部にできた悪性腫瘍(がん)を治療することができる。

―治療環境も変わってきたのでは。

 導入当初は頭頸(けい)部に限られた治療だったが、現在では治療できる部位が広がった。しかも、日帰り治療ができ、保険適用となる。放射線治療の99%程度で健康保険が適用される。1回の治療費は3割負担で約19万円。ただし、高額療養費制度によってこの自己負担は所得区分によって大幅に減ることになる。

―放射線治療の今後の展望は。

 がん患者の頭の先から足の先まで、全身を診るのが放射線科。病巣を治す、痛みを取るなど、治療は幅広い。私自身、放射線科医師を選んだのは、最後まで患者さんに寄り添うことができるから。「この科では、もう何もすることがありません」と言わなくて済む。がんが大きくなるのを止められる、痛みを止められる、骨転移には90%以上の効果もみられる。

 うちにはベテラン技師らがそろっている。実際に医療機器を動かすのは診療放射線技師なので、その腕に治療成果も委ねられている。

 放射線治療への認識が広がり、楽になる患者さんはたくさんいるはずだ。

■乳がん再発で使用、抗がん剤と併用も/美里町の根岸さん

 美里町在住の根岸友香さんは、一昨年と今年2月、乳がん再発治療のためにサイバーナイフ治療を受けた。2016年1月に右乳房全摘手術を受けてからわずか5カ月での鎖骨下リンパと胸骨傍リンパへの再発だった。

 抗がん剤治療しか方法はないと思われていたが、主治医の勧めでサイバーナイフ治療を受けることになった。「説明も丁寧で不安も苦痛もなく約1センチのしこりが消えた。放射線技師の方はミリ単位の位置修正のために、ずれがないようにと、操作室と照射室を何往復も走る姿に脱帽した」と根岸さん。ベースの抗がん剤治療と併用することで治療成果が上がっている。

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