埼玉新聞

 

<スポーツのまちづくり9>経営戦略を立てる武器…市民がスポーツに親しむ、新アリーナの具体化を

  • 池田純氏

 もう一度、声を大にして言っておく必要がある。さいたまスポーツコミッション(SSC)の成功にはどうしても武器が必要だ。

 私がSSC会長のポストに就く大前提であり、さいたま市、および市長に何度も確認した武器の必然性。SSCが本来のスタートを切るには不可欠、いまだに手に入れられないことがもどかしい。私を呼んだ全ての人の覚悟がブレることなく経営にまい進できる状態を切望している。

 ここで言う武器とは何か。具体的には市民の皆さんがスポーツに親しみ、スポーツを楽しむことができる施設、つまりアリーナだ。

 さいたま市には既に、さいたまスーパーアリーナがあるが、スポーツやコンサートなど全国規模のイベントで年間スケジュールはいっぱい。地域密着コンテンツ、市民の気軽な来訪が中心というわけではない。それならもう一つ、ローカルミニアリーナがあってもいいのではないか。

 とはいっても税金頼みという形で市民に過度の負担をかけるわけにはいかない。そうしなくても施設の"経営"を成り立たせる構造はつくれるし、私には横浜ベイスターズの社長を務めた時の経験もある。

 もちろん、アリーナが今すぐつくられるわけではない。私が差配できることでもない。3年先でも5年先でもいい。計画が具体性を帯び、現実にできるということが見えてくれば、そこに向けたいろいろな流れが生まれてくる。

 例えば、新アリーナを踏まえ、さいたまクリテリウムを発展させ、さいたまのスポーツの未来のための先行投資を各方面に働き掛けることもできるかもしれない。あるいは新アリーナを拠点とするコンテンツを今から運営し、スポンサーを募ったり、資本を集めたりできる可能性が生まれる。

 つまり、経営戦略を立てられるようになる。武器が手に入れば、あるいは手に入れられる確証があれば、大きな流れをつくり出せる。

 民間というものは武器がなければ経営できない。これも以前から繰り返し言っていることだが、私は魔法使いではない。今は将来の経営の戦略が描けずもがいている状態だ。

 私にはクリテリウムというイベントを単体で大きく発展させることだけを背負うことはできないし、そんな魔法を使える民間経営者を知らない。背負うなら武器も含めて全て背負わせてほしい。新アリーナができるなら、SSCはそれにふさわしいコンテンツを運営していける。

 SSCの経営戦略を立てることこそ経営者としての自分の役割だ。新アリーナが現実になった時のため、自分で手を打って準備もしている。ただし、いつまでも寝かせておけない。このままでは時間切れになる。

 さいたまのスポーツの未来、市民の楽しみのためのチャンスを逃したくない。

(おわり)

■池田純(いけだ・じゅん)

 1976年横浜市生まれ。早大卒。住友商事、博報堂を経て2011年、株式会社横浜DeNAベイスターズの初代社長。観客動員数、売り上げ拡大に実績を挙げた。日本プロサッカーリーグアドバイザー、大戸屋ホールディングスなど企業の社外取締役なども務める。

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