埼玉新聞

 

味に頑な、看板商品は「頑固豆腐」 さいたまの豆腐製造会社、厳選したにがりや大豆で職人が手作り

  • かつては工場に直売店があったが閉鎖し、現在は豆腐自動販売機を設置する。「地域の皆さまに気軽に買ってもらいたいから」と話す須賀大雄社長=さいたま市岩槻区

 水田と住宅地が混在するさいたま市岩槻区の一画で、140年以上前から続く老舗の豆腐製造会社。25歳の時に5代目に就任した須賀大雄社長(58)は「厳選した大豆、敷地内の地下200メートルから汲み上げた地下水を使い、30年以上働く職人が昔ながらの手作りにこだわった製品を作っています」と話す。

 1876(明治9)年に須賀豆腐店として創業。1955年に現在の須賀食品と名前を変え、代々続く看板を守り続けてきた。現在は約20人の従業員が勤務し、1日平均で約1万丁の豆腐を、学校給食や惣菜工場などに出荷している。

 味に頑なにこだわる意味を込めたブランド「頑固豆腐」を看板商品とする。甘みを考慮して厳選したにがりを使い、木綿や絹のほか、枝豆豆腐やざる豆腐も売れ筋だという。

 約10年前のこと。老朽化した工場を建て替えようかどうか、須賀社長は頭を悩ませていた。量販店の影響で廃業する会社も多く、「先行きが不安定」な業界。しかしこのころ、長男の勇太さん(34)が会社を手伝い始めたことが、須賀社長の背中を後押しし、新工場の設立を決意。現在は6代目予定の勇太さんが専務として、親子で会社を経営する。

 須賀社長は「この地で創業し、140年以上。皆様のおかげでここまで来ることができた」と地域への感謝を忘れない。20年以上前からは区内の小中学生を招き、豆腐作りの職業体験と工場見学を行っている。「地域に感謝の気持ちを還元したい」という思いからだ。

 須賀社長は「岩槻の地で育ててもらった会社。これからも安心、安全な食品を提供することで、地域の皆さまととともに歩んでいきたい」と意欲を見せる。

 さいたま市岩槻区末田2587▽電話048・798・1766

■須賀大雄社長

 経営とは人を愛することから始まると思う。従業員、家族、お客さま、そしてもちろん自社の商品。その思いが一番大切になっていく。

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