埼玉新聞

 

亡き女児への思いをバラに…平和願う「のぞみ」与野公園に 伯父が作出、縁あるさいたま市で初の植樹

  • バラ「のぞみ」の苗を植樹する(左から)「中央区バラサポーター」の井原正会長、さいたま市公園緑地協会の渡辺誠吾理事長、北里大介区長、小野寺達さん=17日、与野公園

    バラ「のぞみ」の苗を植樹する(左から)「中央区バラサポーター」の井原正会長、さいたま市公園緑地協会の渡辺誠吾理事長、北里大介区長、小野寺達さん=17日、与野公園

  • バラ「のぞみ」。ヨーロッパの気候では長期間咲くため、世界中で人気だという(小野寺達さん提供)

    バラ「のぞみ」。ヨーロッパの気候では長期間咲くため、世界中で人気だという(小野寺達さん提供)

  • バラ「のぞみ」の苗を植樹する(左から)「中央区バラサポーター」の井原正会長、さいたま市公園緑地協会の渡辺誠吾理事長、北里大介区長、小野寺達さん=17日、与野公園
  • バラ「のぞみ」。ヨーロッパの気候では長期間咲くため、世界中で人気だという(小野寺達さん提供)

 バラの名所である埼玉県さいたま市中央区の与野公園で17日、ボランティア団体「中央区バラサポーター」や同区役所の北里大介区長らが区制施行20年を記念して、バラ「のぞみ」を植樹した。アマチュア育種家の元埼玉大教授が、満州(現中国北東部)からの引き揚げ途中に亡くなった3歳のめいを悼んで作出した品種。バラに込められた平和への願いを知ってほしいと、由来を説明する看板も設置した。

 のぞみを作出したのは、旧浦和市(現さいたま市)に住んでいた小野寺透さん(2003年に89歳で死去)。30代のころ、妹の長女である3歳の今井のぞみちゃんが、満州で家族を亡くし、一人で引き揚げる際、品川駅に到着する2時間前に列車の中で亡くなるという悲劇に遭遇する。その後、バラの育種家となった小野寺さんは1968年、作出したピンクのバラに「のぞみ」と命名。のぞみちゃんの墓はさいたま市緑区にある。

 昨年12月、この実話をベースにした絵本の出版を報じる記事が埼玉新聞に掲載。さいたまに縁ある平和のバラの存在を知った中央区バラサポーターが「植樹して戦争の悲惨さを語り継ぎたい」と公園に苗2本を寄贈した。

 与野公園は約200種、3千本が楽しめる「バラ園」が有名。さいたま市公園緑地協会によると、市内の公園に「のぞみ」が植えられたのは初めてだという。

 17日の植樹式では、北里区長が「由来を知って胸がつまる思い。戦争では子どもや弱い人が犠牲になる。ウクライナ侵攻が続く中、多くの人に知ってほしい」とあいさつ。小野寺さんの次男で、東松山聖ルカ教会(東松山市)の牧師・達さん(72)も駆け付け、「長年住んださいたま市に植樹され、父も喜んでいると思う。父は『バラづくりは文化である』とよく言っていた。平和への思いが広がればうれしい」と語った。

ツイート シェア シェア