埼玉新聞

 

日本人27年ぶりの快挙 理美容技術の世界大会、さいたまの理容師が制する 県勢で初 世界一の秘訣は

  • 世界一のトロフィーと金メダルを手にした妻・祐子さんの後方で、はさみを手に笑顔を見せる山崎桂さん=2日、さいたま市北区植竹町1丁目の「glaux」

 さいたま市北区植竹町1丁目の理容師、山崎桂さん(39)が9月15、16日にフランスのパリで開催された世界理美容技術選手権大会「OMCヘアワールド」で世界一に輝いた。カット技術を駆使し、中世の伝統的髪形の刈り上げの美しさを競う大会の花形、テクニカルカテゴリーのクラシックカット部門を制した日本人は27年ぶり2人目の快挙で、埼玉県勢で初。山崎さんは「まさか金メダルなんて。信じられなかったが、表彰式で日の丸を掲げた時は本当にうれしかった」と、受賞時の興奮に目を輝かせた。

 制限時間35分間にマネキンの頭を仕上げる同部門には、世界理美容機構(OMC)に加盟する世界の国々から約50人がエントリー。審査対象となる仕上がりで高い評価を得るには、「真っすぐ切る」「量を均一に減らす」など、さまざまカット技法が不可決で、真の実力が要求される。ドライヤーやブラシなども駆使し、「とにかく『髪の根元を起こせ』というトレーナーの言葉に集中した」と山崎さん。「手応えはあったが、2位まで名前を呼ばれず、入賞はないと思った」と喜びもひとしお。それでも、「周囲の応援、期待を肌で感じていた。ほっとしたのが本音」と、重圧の大きさをうかがわせた。

 さいたま市北区で理容店「glaux(グラウクス)」を営む山崎さん。2007年全国理容競技大会で優勝した経歴から、埼玉県と東京都、国際理容協会で講師を務め、理容師の指導にも情熱を注ぐ日々。横浜市で生まれ育ち、横浜商業高校野球部出身。「人の役に立ち、喜ぶ顔が見たい」と理容師の道に進み、横浜の理容店時代に「同期が出るから」と挑戦した競技大会が人生の転機に。神奈川県で優勝を飾るが全国で"惨敗"。「もっとうまくなりたい」との一心で競技会で上位の多数を占める東京都に活躍の場を移し、07年に日本一に輝いた。

 世界一の秘訣(ひけつ)を問うと、「はさみです」とにっこり。「時間を競う場合は、『切れない』と感じるだけでリズムが狂う。集中している時こそ、一度離れて全体を見る"観測"も大事」と力を込める

 練習は日常の接客後、深夜。夫婦で13年にオープンした北区の店舗には仕事を終えた後に山崎さんの教えを請いに遠方から訪れる理容師も後を絶たない。山崎さんは「理容界の後継者、弟子を育て、社会に貢献したい」と話す。

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