埼玉新聞

 

<元生徒が自殺>遺書で「大ウソつき」と書かれた川口市教委に虚偽、隠蔽の可能性 文科省が指摘

  • 文科省から県教委に示された「指導助言」の内容。市教委指導課長の発言と実際の内容が違うとして「虚偽、隠蔽と捉えられる可能性もある」と記されている(画像を一部加工しています)

 2016年11月に開かれた川口市議会の「子育て・教育環境向上対策特別委員会」で、市内のいじめの実態の説明を求めた市議に、市教育委員会が2件起きている中学校の問題を1件と報告して「解消に向けて鋭意取り組み中」としたり、「重大事案はこれまでに発生していないので調査委は開催されたことはない」と答弁したことなどについて、文科省が実際の内容と異なることを指摘し、「虚偽、隠蔽(いんぺい)と捉えられる可能性もある」と指摘していたことが10日分かった。

 川口のいじめ問題は、16年9月に市北東部と南東部の二つの市立中学校でそれぞれ男子生徒が不登校になり、南東部の中学1年の生徒は9、10月に2回、自室で首をつる自殺未遂を起こした。生徒2人の保護者たちは学校側に「いじめ防止対策推進法の重大事態として調査を始めるなどの対応をしてほしい」と学校や市教委に申し出ていた。

 16年11月7日の市議会の答弁は、市議が「いじめの認知件数が増加したが、現状と対応について教えてほしい」と質問。市教委の当時の指導課長は「小学校3件のうち2件はほぼ解消され、中学校は1件のみ未解消。(小学校の1件と合わせて)2件とも解消に向け鋭意取り組み中」と答弁した。

 「未解消のいじめ事案のうち、期間が最長の事案の、認知した日からこれまでの日数は」という質問には、「現時点における最長の未解決事案の経過期間は約1カ月」と短く答えていた。

 「市いじめ問題調査委員会について、これまでの運営回数と、対処した事案の内容は」の質問には、「調査委は重大な事案が発生した場合に開催するものであり、これまでに開催を要するまでの事案が発生していないことから開催されたことはない」と答弁した。

 文科省や県教委は市教委に「法に基づく対応」を求める指導を行い、市教委は北東部の学校の第三者委を17年2月に設立。南東部の学校の生徒が同年4月に近くのマンションから飛び降りて3回目の自殺未遂を起こした後、文科省は17年8月3日付で県教委に指導助言を示し、議会での市教委の答弁について、「虚偽、隠蔽と捉えられる可能性もある」と指摘していた。

 南東部の学校の第三者委は同年11月に設立されたが、生徒から直接聴取することはできず、生徒は今年9月8日未明、「市教委は大ウソつき」と遺書を残して自殺した。

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