埼玉新聞

 

目や喉の痛み、頭痛…光化学スモッグ調査にドローン、全国初の活用 夜間上空に高濃度の原因物質を観測

  • ドローンを活用し、全国で初めて光化学スモッグの調査を実施(県環境科学国際センター提供)

 県環境科学国際センター(加須市)は、全国で初めて行ったドローン(無人航空機)を活用した光化学スモッグの調査結果をまとめた。発生や解消のメカニズムを解明するため、ときがわ町の標高約850メートルに位置する東秩父環境大気測定局(東秩父局)周辺で調査したところ、光化学スモッグの原因物質であるオゾンは日中に生成された後、夜間は上空に高濃度にとどまるという仮説が立証された。同センターは「光化学スモッグの発生メカニズム解明への第一歩となる成果。今後も継続的に調査し、注意報発令の予測にも役立てたい」としている。

 同センターによると、光化学スモッグは、自動車や工場からの排気ガスなどに含まれる窒素酸化物と、塗料や接着剤などに含まれている揮発性有機化合物が、太陽光で化学反応を起こしてできる光化学オキシダント(主にオゾン)の濃度が高まることで発生する。発生すると、目や喉の痛み、頭痛といった症状や植物被害などの影響が出る。

 埼玉は光化学スモッグ注意報の発令日数が全国的にも多い。2007年から17年までの11年間で、全国最多は7度。07年は32回、10年は25回発令された。

 ただ、光化学スモッグの上空の濃度分布や時間による変化は、まだ解明に至っていない。原因は不明だが、県内では平地にある測定局では夜間になるとオゾン濃度が下がる一方、標高約850メートルにある東秩父局では夜間になっても濃度が下がらないことが確認されていた。

 そこで同センターでは、日中に生成されたオゾンが、夜間は上空にとどまっているとの仮説を立てた。立証するため、昨年7月30日と31日に東秩父局周辺で、計測機器を搭載したドローンを使って上空のオゾン濃度やPM2・5(微小粒子状物質)を調査。正午、午後3時、同6時、同9時の4回にわたり、高度850メートルから30メートル間隔で1千メートルまで測定した。

 調査の結果、31日15時と18時の高度1千メートルのオゾン濃度は、標高850メートル地点より約25ppb高い値を観測。また、東秩父局の夜間のオゾンは、日中の平野部よりもさらに高濃度だったことが分かった。

 翌日は県内で光化学スモッグ注意報が発令されており、同センターでは「夜間に上空にたまっていたオゾンが翌日に下がってくることで、オゾン濃度がより高まった可能性もある。今後は平野部上空や夜間から早朝にかけての調査などを行い、光化学スモッグの発生メカニズムを解明し、対策につなげていきたい」としている。

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