埼玉新聞

 

<川口いじめ>校長「母に妨害され元生徒と面談できず」…実際は面談していた 市教委の陳述書は「虚偽」

  • 実際には元生徒の方が断ることが多かったことを示す元生徒のラインの記録(原告提供)

 川口市立中学校のサッカー部でいじめや体罰を受け不登校になったのは学校や市教委の対応が不適切だったためだとして、元男子生徒(16)が市に損害賠償を求めている問題で2日、さいたま地裁(岡部純子裁判長)に市教委が証拠として提出した校長、部活顧問、加害生徒らの陳述書について、原告側が「ほとんどに事実と違う虚偽が書かれている」と指摘していることが分かった。原告側が手元に残る録音記録などと照らし合わせて検証した。

 元生徒は2015年4月に入学し、2年生の2学期の16年9月から長期の不登校になった。17年2月に第三者の調査委員会が発足し18年3月に調査委が報告書を出し「法律上いじめと認定できる行為があり、その行為が不登校の主たる原因と考えられる」と認定した。

 報告書によると、元生徒は入学と同時に入ったサッカー部で「ライン外し」などのいじめが始まり、翌16年3月には首が絞まった状態で引きずられるなどの暴力にエスカレートした。

 長期不登校が始まった2年生の9月は元生徒が悩み抜いていた時期だった。原告によると、1カ月後の10月には担任教諭が元生徒宅を訪問。元生徒と話し、11月には校長も来て元生徒と直接面談していじめ被害を確認し「つらい思いをさせた。指導不足で申し訳ない」と元生徒に謝罪した。

 ところが、今回校長が提出した陳述書では「3年間の学校生活の中で訴えは全て母親からのみでした…生徒本人と直接面談したり、いじめ被害の確認をしたことがなかった」などと強調。それは「母親が妨害したため」とする内容になっている。

 一方、加害生徒の陳述書は、元生徒から「遊ぼう」と誘われ、不登校になってからも同じだった、という内容。元生徒側のスマートフォン(スマホ)に残るラインの履歴では、誘うのはいつも加害生徒の側で、元生徒が断ることが多かった。

 第三者委が「先に蹴られた」とした加害生徒の主張を認めず、一方的ないじめと認定した件について加害生徒は「元生徒が先に蹴った」と改めて主張している。

 原告は校長との会話の録音、加害生徒と被害者との当時のラインのやりとりの履歴と照らし合わせるなどの検証を行った。

 元生徒の母親は「市は責任逃れのためにうその上塗りを重ねているだけ。深く反省し問題と正面から向き合ってほしい」としている。

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