【Tokyo とことこ散歩】錦糸町で出合った人生訓 江戸の足跡、職人の営み
繁華街がにぎやかな東京・錦糸町だが、池波正太郎の時代小説「鬼平犯科帳」ゆかりの場所が点在し、江戸の足跡や職人の営みが残っている。路地に入ると、思いがけない人生訓と出合った。
物語で多くの犯罪者を更生させた鬼平こと長谷川平蔵は江戸時代に実在した人物だ。その屋敷跡を目指し、JR錦糸町駅から南へ。たどり着いた歯科医院前の案内板によると「遠山の金さん」でおなじみの遠山金四郎も後にここに住んだという。この何げない街角にいたと思うと、2人が急に身近に感じられた。
江戸の暮らしを想像しながら、幕府の貯木場があった猿江恩賜公園へ。楽しそうにボールを追う子どもたちの傍らにあったのは大きなリンゴのモニュメント。作品名を「りんご りんご」といい、「デジタルな日々、誰の心にもりんごを描きたい」と添えられた作者の言葉が妙に刺さった。
次は駅北側を散策。しゃれた店構えに引かれ「すみだ和ガラス館」に入った。1899年創業のガラスメーカー「廣田硝子」の店で、伝統的な江戸切子の他、どこか懐かしい風合いの食器やランプシェードなどが並ぶ。どれもすてきでいつか友人に贈ろうと決めた。
辺りには鬼平ゆかりの寺などが点在。江戸っ子ならすしだろうと、江戸前の「安兵衛寿し」に入って無口な大将にちらしずしを注文した。お茶を出してくれたのは大将の姉、なんと90歳。七十数年前、新潟から上京し、結婚相手は「包丁1本さらしに巻いて、東京のすし屋を回る助っ人職人だった」と教えてくれた。
今の店の近くで独立し、弟も合流。当時は店が狭く、岡持ちが客の頭にぶつかるほどだったという。弟の大将も笑顔になり、昔話に花が咲いた。
近年は東京スカイツリー目当ての外国人観光客が訪れるようになり、大忙し。「元気の秘訣はきれいな心。後ろめたいことがなければ、人生楽しいよ」。90歳の笑顔に見送られ、背筋を伸ばして錦糸町を後にした。
【ちなミニ】ランチのちらしずしは1200円。















