埼玉新聞

 

「世界の蝶」展 8月2日まで、川口市立美術館で 世界各国をめぐり蝶ハント 「ホメロス」など採捕の思い出

  • 53年前に自分が捕まえたホメロスを指さす安藤俊之さん(右)と尾熊勇さん=川口市立美術館

    53年前に自分が捕まえたホメロスを指さす安藤俊之さん(右)と尾熊勇さん=川口市立美術館

  • 国道122号ができる前、川口市新町で乱舞していたアカシジミたち。尾熊勇さんが中学生だった1965年に捕まえた

    国道122号ができる前、川口市新町で乱舞していたアカシジミたち。尾熊勇さんが中学生だった1965年に捕まえた

  • 53年前に自分が捕まえたホメロスを指さす安藤俊之さん(右)と尾熊勇さん=川口市立美術館
  • 国道122号ができる前、川口市新町で乱舞していたアカシジミたち。尾熊勇さんが中学生だった1965年に捕まえた

 JR川口駅前の川口市立美術館で「世界の蝶(ちょう)」の展示会が開かれている。市内で会社を経営する安藤俊之さん(75)、元市役所職員の尾熊勇さん(75)らコレクターが中心。2人は市立西中学校の同級生で、ともに「昆虫博士に」という少年時代の夢をかなえた。

◆ホメロスをゲット

 オイルショックの後、川口市を支えた鋳物工場や機械工場が変貌する中で、安藤さんの父の機械工場もデイサービス業界へ転身。無借金での転業は幸運だった。安藤さんは原町小、西中から県立川口高校、東京の工学院へ。父の経営を手伝いながら蝶ハントに励み、谷川岳や北アルプスなど山の経験を積んだ。コレクターとして成功したのが20代。ジャマイカ島ブルーマウンテン山脈の2週間で「ホメロス」をゲット。ギリシャ神話の神の名前の世界的な貴重種だ。

 標本の根元の小さなカードの記録は「1973年7月13日午前10時17分」。「そのすぐ後にワシントン条約で採捕が禁止された。日本人でホメロスを捕ったのは私だけ」。

 29歳の時、父が急死し、経営を引き継いだ。以降15年間は蝶屋はやめ、子育てと経営に余裕ができた45歳頃に再開し、「日本もいいなと思った」。沖縄や北海道へ、国内での蝶ハントに夫婦で出かけた。「蝶のいるところは自然豊かで温泉もある。妻は喜んで付き合ってくれた」

◆小4で“大金星”

 尾熊さんは飯仲小学校4年生の体験が原点。夏休みに、10歳上の兄が川口西公民館主催の昆虫採集会に連れて行ってくれた。「バスで行った川口の安行慈林で僕の補虫網に入ったのがオナガアゲハ。川口市で採捕の初記録だった。その個体を展示した。翅(はね)がちゃんと開いていない。でも私の宝物です」

 「その頃は今と違う町があった。例えば、米屋のおやじがバイクで小学生の私の家に来て『秋田でこんな虫を捕った。見に来いよ』と言う。今はこんなことはない」。中学時代から同級生の安藤さんと2人で高校生の自宅に通い、いろいろ教わった。そういう人の付き合いやコミュニケーションがあったという。

 尾熊さんは県立蕨高校から専修大学へ。兄に連れられ北アルプスへ通い、登山と蝶ハントに熱中した。川口市役所に入り、40歳になってから上司に頼み込み2週間の休暇をもらい、2年に1度ぐらい、ヒマラヤやモンゴルへ。その頃に捕まえたパルナシウスは「氷河期の生き残り」と言われる貴重な蝶だ。「中学生の時、川口市に国道122号がない時代に、健在だったクヌギやコナラの雑木林で捕まえたアカシジミたちを、ぜひ見てほしい。失われた豊かな自然の証言者たちです」

 展示は8月2日まで、午前10時~午後6時まで、月曜は休館。入館無料。

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