埼玉新聞

 

「35歳」これからも 1988年復活の秩父鉄道SL、今季の運行開始 昨季までに2955回運行「皆さんのおかげ」

  • 今シーズンの運行を開始した秩父鉄道のSLパレオエクスプレス=1日午前10時15分ごろ、埼玉県熊谷市の秩父鉄道熊谷駅

    今シーズンの運行を開始した秩父鉄道のSLパレオエクスプレス=1日午前10時15分ごろ、埼玉県熊谷市の秩父鉄道熊谷駅

  • 今シーズンの運行を開始した秩父鉄道のSLパレオエクスプレス=1日午前10時15分ごろ、埼玉県熊谷市の秩父鉄道熊谷駅

 秩父鉄道(本社・埼玉県熊谷市)のSLパレオエクスプレスが1日から今シーズンの運行を開始し、「都心から一番近い蒸気機関車」が秩父路を駆け抜けた。SLは1988年3月の運行開始から今年で35周年。時代を超えて愛されてきた黒い雄姿は煙を吐き出しながら力強い走りを見せ、多くの家族連れや鉄道ファンを楽しませた。

■たい平さんも

 「出発進行!」。石田克己熊谷駅務区長兼熊谷駅長(59)の合図で、ファーストランのヘッドマークと日章旗を付けたSLが熊谷駅から汽笛を鳴らして出発した。さいたま市から息子の由都さん(7)、光記さん(3)と訪れた佐藤考英さん(45)、里紗さん(32)夫妻は「子どもがSLが好きで、楽しみだった」

 にぎわいを見せた出発式には、秩父市出身で落語家の林家たい平さん(58)も登場。たい平さんは「秩父鉄道沿線にはたくさんの観光名所やおいしいものがある。SLに乗って、たくさんの思い出をつくって帰ってほしい」とあいさつし、SL運行35周年記念のくす玉を割り、下り熊谷~長瀞駅間にも乗車した。

■博覧会が契機

 運行中のC58―363号機は1944年2月、川崎車両で製造された蒸気機関車。現役時代は東北を中心に活躍し、72年に現役引退後は旧吹上町(現鴻巣市)の吹上小学校の校庭にあった。88年3月開催のさいたま博覧会でSL運行の声が高まり、復活を果たした。昨シーズンまでに2955回運行され、乗車人数は約185万人に及ぶという。

 今年は12月3日までの土日祝日を中心に計80日間運行。熊谷~三峰口駅間を1日1往復する。SLに携わって16年目で、機関士の千代田昌巳さん(54)は「一番大事なのは安全の確保。お客さんに楽しんでもらえるよう気を引き締めていきたい」と語った。

■安定した運行

 SLは全席指定席で、乗車には乗車区間分の普通乗車券のほか、SL指定席券が別途必要になる。昨今の社会情勢の変化で、石炭や重油などの運行に関わる経費が増大しており、安定した運行継続のため、料金を740円から1100円に改定した。今後はクレジットカード決済で購入できるシステムも導入する。

 牧野英伸社長(60)は「値上げでお客さんが来るか心配だったが、大勢の人が来てくれて、本当にうれしい」と安堵(あんど)。「35周年を迎えられたのはファンや沿線の皆さんのおかげ。これからもSLに乗って良かったと思ってもらえるよう、さまざまなサービス向上に努めていきたい」と話した。

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