ボランティアで害獣駆除…ベテラン保育士が動物の命と向き合う「誰かがやらないと」 きっかけは保育所の天井裏に現れたアライグマ 狩猟免許を取得し猟友会へ 殺生への葛藤を抱え、手を合わせ供養も
アライグマやハクビシン、タヌキなどの野生動物が農作物を食い荒らしたり、家屋へ侵入したりする被害が各地で報告されている中、無償で捕獲に取り組む男性がいる。埼玉県上尾市立愛宕保育園の保育士野村徹也さん(56)だ。個人で狩猟免許を取得し、捕獲許可を受けて、トウモロコシ畑やブドウ畑などを荒らす「害獣」を駆除している。「誰かがやらないと」と語る野村さんの思いとは…。
6月19日早朝、上尾市須ケ谷のトウモロコシ畑。1匹のアライグマが箱わなにかかっていた。設置した野村さんは手を合わせて、目を閉じる。ほんの少しの静かな祈りの時間。そして一呼吸ついて電気ショックをかける。一瞬の衝撃の後、徐々にアライグマは動かなくなった。
■20年越しの狩猟免許
野村さんは勤続36年の保育士。20年ほど前に、当時勤務していた保育所の天井裏にアライグマが居ついたことがあった。大量のフンで子どもたちの健康への害も心配だった。しかし、自分では駆除することができず「歯がゆい思いをした」。それがきっかけとなり「いつか役に立てるようになろう」と心に決めた。実現したのは昨年7月。狩猟免許を取得し、猟友会にも入会。念願だった活動を開始した。
捕獲にはさまざまな手続きが必要だ。被害に遭っている農家から依頼を受けた後、「鳥獣捕獲依頼書」と「許可申請書」を市役所に提出。その際、狩猟免状の写し、捕獲場所の地図(狩猟者マップの区分と詳細位置)、被害状況の写真、使用する駆除器具の資料などをそろえなければならない。捕獲後も、どこで何を何匹捕ったか、雄か雌かを報告書に記して提出する。
■費用は全額自己負担
捕獲にかかる費用は全て自己負担。箱わなは1基約1万3千円で、現在8基を稼働。駆除器具(電気式)も約3万3千円。エサ代も月2千~3千円ほどかかる。年間の支出は概算で約20万円に上り、猟友会の会費や保険、狩猟税も別途かかる。捕獲した個体の処分は環境センターに持ち込み、有料(1匹700円)で焼却してもらう。捕獲者への行政の補助はない。
民間業者の場合、箱わなの設置だけで約10万円。捕獲するごとに料金が発生する上、侵入口の封鎖などでさらに費用がかさむ。「頼みたくても頼めない」という声を耳にしてきた野村さんは「地域の人の役に立てれば」と活動を続ける。
■殺生への葛藤と供養
毎朝5時、仕事の前に設置場所を見回る。わなに害獣がかかっていればその場で駆除し、袋に入れて持ち帰る。昨年の捕獲数は、アライグマが18匹、ハクビシンが8匹、タヌキが10匹。タヌキは在来種だが、捕獲される個体の多くは疥癬(かいせん)にかかり、毛が抜け落ちて皮膚がただれた末期の状態で、「人にうつる危険もあるので放っておけない」と言う。
一方、殺生への葛藤も抱える。自宅に動物供養のお札も安置し、線香をあげている。「ただ殺されるために生まれてきたわけではないので、せめて供養になれば」と可能な部分を少量食用にする。命への痛みを抱えながらも、全部を無駄にしないことで折り合いをつけている。「時間がかかるかもしれないけれど、いずれ社会的な循環ができればと思う。こういう現実があることを知って、理解してもらいたい」
野村さんは、こんな思いを胸に今日も見回りを続ける。











