川口ケアマネ殺害から1カ月 約6割が「働く意欲低下」 暴力やハラスメント経験は約8割 在宅介護の現場に広がる不安、複数訪問や防犯対策進む
埼玉県川口市の住宅に訪問したケアマネジャーが住人の男に殺害され、男自身も首を刺して死亡したとされる事件から1日で1カ月が経った。民間企業が行ったアンケートでは、事件後に「働く意欲を失った」と回答したケアマネジャーは6割に上ったことが判明。在宅介護従事者の安全確保の必要性が改めて浮き彫りとなった。県は財政的支援を発表したほか、自治体も非常事態に備えた訓練を行い、対応を再確認している。
事件は6月1日に発生。介護支援専門員の鈴木希代子さん(63)が川口市飯原町の90代女性方に訪問した際、息子の無職男(60)が鈴木さんの首を刺して殺害し、その後、自身の首を刺して死亡したとされる。男は自ら「ケアマネジャーの女性を刃物で刺した。これから自分も刺す」などと110番した。鈴木さんは一人で訪問していた。
事件を受けて、県は複数人で訪問する際の経費1回5千円(有資格者)を新たに補助すると発表。ほかにも通話録音装置や防犯ブザーなどの購入費用を1事業所当たり10万円補助し、金銭的負担を軽減する。
■業務外の仕事も
ケアマネジャー向け業務支援サイト「ケアマネジメント・オンライン」を運営するインターネットインフィニティー(東京都千代田区)は6月、暴力やハラスメントの被害に関するアンケート調査を実施。回答を得た同サイトの会員であるケアマネジャー1793人のうち、約6割に当たる1036人が事件後に「働く意欲の低下を感じた」と回答した。
アンケートによると、約8割が過去1年間に暴力や暴言、ハラスメントを受けたことがあるという。被害を受けた相手は、今回の事件と同様に利用者の家族やきょうだいなどが78・2%で最多。50代女性は施設入所の申し込みで意見が合わず、利用者の家族からはさみを投げ付けられる被害に遭ったという。
ケアマネジャーは利用者に見合った介護サービスを計画し、関係各所との調整役としての役割もある。約9割は「暴力やハラスメントの被害を受けやすい」と回答し、その多くが「何でも屋と思われている」と認識していることが分かった。公共料金の支払いや電球の付け替えなど、業務外の仕事を押し付けられることも問題になっているという。同社担当者は、被害を減らすためにもケアマネジャーの仕事を周知することが重要だとし、「介護・医療従事者は、在宅という「密室」に一人で出向き、リスクと向き合いながら、日々の活動を続けているということを社会的課題として受け止めてほしい」と訴えた。
■危険想定で実践
朝霞署は6月24日、志木市の介護付き有料老人ホーム「すこや家・志木柏町」で、近隣自治体のケアマネジャーらが参加して訓練を行った。高齢女性宅を訪問した際に息子が要介護度を上げるよう要求したため、ケアマネジャーが即日の対処ができないと回答。すると息子は逆上して刃物を取り出し、職員らに危害を加えようとする想定で実施した。対処が困難であると事前情報の下、出発しやすい位置に車を駐車することや、危険を感じたらすぐに逃げ出すなどといった動きを確認した。
参加したケアマネジャーの40代女性は「一人で訪問するのは怖くなった。事前に役所などと情報共有をして、複数人で行くようにしたい」と振り返った。同ホームを運営するALSOK介護特別業務部の増永義孝部長は「安全は全てに優先し、同じ仲間から同じような被害者は出してはならない。会社一つで安全を守れるものではないので、行政、警察とも連携して社員を守っていきたい」と話した。











