埼玉新聞

 

京アニ犠牲者、10人の身元公表 こんな理不尽はない…らき☆すた監督の悲報、聖地・鷲宮にも悼む声

  • 亡くなった武本さんが監督を務めた「らき☆すた」の特別住民票を手に語る島田吉則さん

 有名作品を手掛けた監督や有能なアニメーター、入社間もない若手社員…。京都アニメーション放火殺人事件で、発生から2週間以上が経過した2日、犠牲者35人のうち10人の身元が公表された。「受け止めきれない」。深い悲しみに暮れる遺族や知人ら。献花台を訪れたファンらは、夢や未来を突然奪われた人たちへ哀悼の意をささげた。

 武本康弘監督の作品「らき☆すた」の舞台となった久喜市鷲宮地域では、関係者らが改めて悲しみに暮れた。

 「らき☆すた」を通じて、地域活性化に取り組んできた久喜市の「島田菓子舗」の島田吉則さん(53)は「こんな理不尽なことはない。ご冥福をお祈りします」と悼んだ。

 作品の舞台になった鷲宮神社と商店街、周辺地域は“聖地”として全国からファンが集う場に。旧鷲宮町時代には「らき☆すた」の特別住民票を交付するなど、町ぐるみで歓迎した。事件後の今年7月28日には、ファンが地元の八坂祭で「らき☆すた神輿(みこし)」を担ぎ、犠牲者に黙とうを捧げた。

 京都アニメーションなどとデザインした特別住民票を手に、島田さんは「(作品は)サブカルチャーではなく芸術だと感じている。作品を多くの人に知ってもらうことが私ができる精いっぱいのこと」と語った。

 「らき☆すた」や「涼宮ハルヒ」シリーズの大ファンという久喜市の大学研究員若林福成さん(28)は「つらい時に勇気付けられ、前向きにしてくれた特別な作品。今でも信じられない」と武本監督の悲報に肩を落とした。

 「らき☆すた」をきっかけに、学生時代から鷲宮地域のまちおこしに携わった。そこで見つけた夢を今も追い続けている。「もっともっと多くのファンに、夢を与える作品を作ってもらいたかった」と悼んだ。

ツイート シェア シェア