「金をだまし取られている」男が県警に通報…訪問した女性を玄関先で襲ったか 90代母の介護を担当していた女性ケアマネ死亡 男も自ら首を刺して死亡 現時点でトラブルは確認されず、思い込みの可能性
埼玉県川口市飯原町の住宅で1日午後、住人の無職男(60)が訪問した介護支援専門員女性の首を刺して殺害し、その後自身の首を刺して死亡したとされる殺人事件で、男が県警に通報した際に「女性に金をだまし取られる」などと話していたことが捜査関係者への取材で分かった。現時点で男と女性の間でトラブルは確認できておらず、県警は男が一方的な思い込みで犯行に及んだ可能性があるとみて捜査している。
殺害されたのは、川口市末広2丁目の介護支援専門員の女性(63)。1日午後3時ごろ、男が「ケアマネジャーの女性を刃物で刺した。これから自分も刺す」という趣旨の110番をした。
捜査関係者などによると、県警が駆け付けると、住宅の玄関付近で血を流して倒れている男と女性が発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。いずれも首に外傷があり、司法解剖の結果、女性の死因は失血死、男の死因も検視の結果失血死とみられる。現場からは凶器とみられる血痕の付いた包丁が発見された。県警は男が女性を玄関付近で襲い、殺害した後に自殺を図ったとみている。女性は靴を履いていなかったという。
男は90代の母親と暮らしており、女性はケアマネジャーとして定期的に住宅へ訪問していた。事件当日は訪問診療の付き添い日だった。男の母親にけがはなかった。
県警は2日、殺人容疑で現場となった男の住宅を家宅捜索。凶器とみられる血痕の付いた刃物などを押収した。
■不足進むケアマネ 現場体制に課題や懸念
川口市のケアマネジャー(ケアマネ)女性殺害事件。県内の介護支援専門員に携わる人たちは、ケアマネの人材が不足している中、「さらに不足が進むきっかけになってしまう」と懸念を示す。
県ケアマネジャー協会の杉田まどか会長は「利用者本人ではなく、家族や支援者とトラブルになるケースに頭を悩ませている人も多い」と話す。県内では2022年1月にふじみ野市で在宅医療を行う医師が訪問先の住宅で射殺される事件が発生。在宅医療現場の医師や看護師の負担の重さが浮き彫りになった。杉田さんは「ふじみ野の事件をほうふつとさせる。あれから働き方は変わっていない」と振り返った。ケアマネは一人で訪問することも多く、対処困難なケースは地域包括支援センターの職員の同席で訪問するという。しかし、センターの人手不足で同席できないケースもあり、「事件でケアマネの働き方が議論されることを期待する」と力を込めた。
県介護支援専門員協会の笈川茂事務局長によると、ケアマネは小規模な事業所も多く、横のつながりが希薄で、利用者とのトラブルなどの相談が多く寄せられるという。
川口市介護保険課は「あってはならない事件が起きてしまった」と話し、事件が発生した住人と女性ケアマネとの間でのトラブルの有無や、どの程度、当該家族の介護に関わっていたのかなどを調査している。「ケアマネジャーの仕事がしづらくなるような状況になってはならない」と心理的影響に懸念を示した。
■県「何ができるか」
県は、ふじみ野の事件を契機に利用者やその家族からの暴力行為や迷惑行為、ハラスメントなどについて相談できるセンターを設置している。
県高齢者福祉課によると、同センターへの介護事業所からの相談は昨年度、102件寄せられた。内容は精神的暴力(暴言)が77件、暴力が3件、セクシャルハラスメントが11件、その他11件だった。
大野知事は2日の定例会見で「地域の介護サービスの要の役割を担っているケアマネジャーの方がこうした事件に巻き込まれるのは大変残念。複数人で訪問するための現行の制度が使いにくく、国に要件緩和を求めるとともに、県単独でも何ができるか早急に考えたい」と述べた。










