「今の私にしかできないこともある」 脳腫瘍の影響で急激に視力をほとんど失う ブラインドアイドルの加藤さん ファンやメンバーの存在が心の支えに 埼玉でチャリティー音楽祭に初参加
視覚に障害があるアーティストによるチャリティー音楽祭「プレミアムライブ」が21日、さいたま市大宮区のレイボックホールで開催された。全国各地から18組が集結する中、今回初めて参加した群馬県のご当地アイドル「あかぎ団」加藤さやかさん(37)の姿もあった。2019年に脳腫瘍で視力をほとんど失った後も、ブラインドアイドルとして活動を続ける加藤さんの思いとは―。
■失われた視力
11年にあかぎ団のオーディションに合格し、アイドルという幼い頃からの夢をかなえた加藤さん。音楽活動や群馬のPRなど順調に活動を続けていた19年春、視界が砂嵐のように見えるようになった。いくつもの医療機関を回ったが原因は分からず、念のため撮影したMRI検査で8センチの脳腫瘍が見つかった。
「原因が分かって安心した。その時は手術すれば良くなると信じていた」
8時間に及ぶ手術を乗り越えたが、視神経を圧迫したことが原因で急激に視力を失った。現在は視野が極端に狭く、わずかにセピア色を感じる状態で文字や人の顔は認識できない。加藤さんは当時を振り返り「しばらく涙が止まらなかった」と語るが、あかぎ団に戻る以外の選択肢は全く考えていなかった。
■アイドル復帰
活動休止中、心の支えとなったのはファンやメンバーの存在。メッセージを書いたノートを渡してくれたり、イベント後に集まって撮影した動画を送ってくれたりした。「待ってくれている人たちのために」。退院後すぐにレッスンを受け、わずか1カ月でステージ復帰を果たした。
新曲の収録に向けてはメンバーとカラオケボックスに行き、歌詞を一言ずつ教えてもらいながら覚えた。当初は1期生として「どこまで頼っていいのか」と悩むこともあったが、メンバーの方から「今、困っていますか?」などと声をかけてくれるうちに「もっと頼っていいんだ」と思えるようになっていったという。ステージまでメンバーと手をつないで向かうことで、距離も縮まったと感じている。
アイドル活動を初めて15年。意外にも、あかぎ団を居場所と思えたのは病気になった後だと打ち明ける。「それまではたくさんいるメンバーの一人という認識だった。多くの励ましをもらって、自分が戻っていい場所なんだと思えた」
■今の自分だからこそ
目が見えなくなって、できなくなったこともある。例えばステージから自身のファンを見つけて手を振ること。ダンス中に他のメンバーのカバーに入ること。「『前だったら…』と思う時はあるが、今の私にしかできないこともある」と加藤さんは前を向く。
今回のチャリティー音楽祭のように自身の存在によって声がかかることもある。加藤さんは「視覚障害者への理解もまだまだと感じる中、小さなところからでも周知できるアイコンになれたら。いろんなことに興味津々。個人としても仕事を増やしていきたい」と意欲を示した。









